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「王子、1度おりてくださいませんか。このままでは、腕から王子が落ちてしまいます。」
「……」
もう手が限界なのよ!
困っている私にペコリンが手を貸してくれて、そのまま椅子まで連れて行ってくれた。
王子を落っことす心配はなくなったけど、私の膝に座ってギュッと抱きついて離れない。
「一体何があったんですか?」
「……」
王子は頑なに口を閉ざしてるけど、何か怖い事でもあったのかな。
ガタン
キッチンにある裏口が突然開いて、そこには2メートルをゆうに超える男が立っていた。
「貴様は誰だ?」
ペコリンが知らないって事は、王子の護衛じゃないって事だよね。でも、護衛騎士の服を着てる。
トリトン様がさっきよりも真っ青になって、ブルブル震えている。もしかして、この大男から逃げていたのかも。
「大丈夫ですよ。ここにはリーリンもキルテもいますから。」
トリトン様は私の首に腕を回して、コクコクと頷いた。
「止まれ。それ以上近づけば殺す。」
ペコリンの制止も聞かず、大男は一歩近付いて来た。
え……?
大男ばかりに気を取られて気づかなかったけど、何これ!?
床が流砂みたいになって、私とトリトン様だけ沈んでない!?
すぐにその場から離れようとしたけれど、沼のようになった床から一歩も動けない。
「王子!フェルト様!!」
「ペコリン来ちゃ駄目っ!貴方も足を取られるだけだから!先にその大男を倒して!!」
私の声が聞こえたのか、キルテがキッチンへ飛び込んで来た。それに気を取られた大男の隙を見逃さず、ペコリンは男の首を跳ね飛ばしてした。
もう男に襲われる事はなくなったし、トリトン様を落ち着かせないと。
「トリトン様、動かず私にしっかり捕まっててください。」
「しずむ!うもれるっ!!」
「大丈夫です。顔まで埋もれる事はありませんから」
普通ならね。
けど、休憩室の石畳が液状化したみたいになるのは普通じゃない。絶対に何かの魔法よ。死んだ大男の魔法って事はありえない。トリトン様の髪や服に砂が付いてたのを考えると、これはトリトン様の魔法なのかもしれない。けど、小説に第三王子が魔法を使える設定は無かったと思うのだけど。
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