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「トリトン様、偽物の護衛は退治しましたよ。落ち着きましょう。」
ゆっくり背中を擦ってあげると、王子の腕の力が少しだけ緩んだ。
「今日はもうお勉強は終わりにして、私と遊びましょうか。」
「……おこられるし」
「私はトリトン様の未来のお義姉様ですから、陛下も許してくださいますよ。」
「本当に?」
「ええ。」
ペコリンが偽物の護衛の生首を布にくるんで何処かへ持っていくのを見て、私が平常心でいられなくなりそう。けど、今ここで焦ってしまうと、せっかく落ち着いてきたトリトン様の魔法が、また暴走する可能性がある。そうすると、魔法を使えない私は確実に死ぬし、魔法を使いこなせないトリトン様も死ぬかもしれない。それだけはダメ!!
落ち着くように背中を擦っていると、液状化は完全におさまった。私とトリトン様は腰くらいまで埋まっているけど、まわりには筋骨隆々の騎士が沢山いるからすぐ出してもらえるよね。
……なんて、甘かったわ。救出された時には既に日が暮れてしまって、月が出ていた。
急いで邸に帰ろうとしたけれど、トリトン様が離してくれなかったので、強制的に王城で泊まる事になってしまった。
それだけでも十分嫌なのに、さらに私を苦しめたのはお風呂の存在。
何で私をお風呂に入れる為に、メイドが3人も一緒に入ってくるの。こういう必要ない物を節約していけば、年間何億って貯金が出来るんよね。このお風呂係3人の年収だけでも相当なものでしょ。
お風呂からあがると、お部屋のソファーにトリトン様がちょこんと腰掛けていた。
「イジワル女はお風呂が長い。もう夜ご飯だし。」
もしかして、迎えに来てくれたのかな?
イジワル女って言いながらも手を繋いで案内してくれるトリトン様は、めちゃくちゃ可愛い!
「トリトン!シュナさん!襲われたって聞いたけど、大丈夫?」
廊下を歩く私達の元へ、オルセン様が走ってきた。
「ええ、トリトン様も私も元気ですよ。」
「良かった。」
「オルセン様が頼もしい護衛を二人も付けてくださったので。ありがとうございます。」
「え……、あの……、なんでそれを……?」
もしかして、秘密だったのかな?
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