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奇襲
「人を責めて、自身の行動を顧みない貴方に、私は辟易しているのです。少し考えれば解りそうなものですが。」
私は『極悪令嬢』らしいから、この場の空気が凍りつこうが関係ない。勇者になれない王太子には、しっかり指導するわ。
「別に、ミネルバとアレックス様が仲良くしている事を私は咎めません。だから、まわりが許す限り、ミネルバと過ごして頂いてかま…っ」
話していると、キルテが何故か私を突き飛ばした。その後、『ドーンッ』と大きな音がして振り返ると、首の折れた怪鳥と血を流したキルテが倒れていた。
「キルテっ!!」
もしかして、私を目掛けて怪鳥が突っ込んできたの?
「……っ」
大穴の開いた壁から、目を光らせて飛んでくる鳥が何匹も見える。
「スクリュー!貴方は王子達を早く連れて逃げて!!」
ここで、王子達を死なせる訳にはいかない。アレックスが魔法を使えなくても、この国を救う人物である事にはかわりないんだから。
「フェルト様も逃げて下さい!」
ペコリンが私の腕を引っ張るけど、力いっぱい振り払った。私が狙われてるなら、王子達と一緒に行動出来ない。
「ペコリン、護衛騎士さん、今から怪鳥が5匹、ここに入ってくるわ」
「え……?」
「穴の外、小さな光が見えるでしょう。あれが全部突っ込んでくる。逃げる余裕も、仲間を呼ぶ暇もないの」
……キルテに意識はない。どうしよう、キルテが欠けると、魔王討伐は不可能かもしれない。
悪い方に考えてはダメ。彼は気を失っているだけ。そう思う事にする!
「キルテ、貴方の剣、借りるわよ」
ペコリンは強いし、王子の護衛をしている騎士なら、精鋭揃いのはず。きっと負けない。
「あの怪鳥は大きいだけで弱い。斬れば簡単に死ぬわ。出来れば、大きくなる前に殺して」
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