一応初対面

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一応初対面

「お嬢様、今日は機嫌が宜しいですね。」 「そう?」 「はい、芝生に寝転んだ時は驚きましたが、目覚めてからはスッキリした表情をなさってますので。」 「気分がいいのは確かだわ。」 このメイドさんがシュナの専属であれば、たしか名前はネロだよね。 「ネロ、アレックス殿下が来るのは何時だったかしら?」 「14時です。お忘れですか?」 「そうだったわね。ふふ、まだ少し寝ぼけてるみたい。」 アレックスと会うのは14時。奴がさっさと帰ってくれれば、その後やりたい事が出来る。 聖女が出てきたからって直ぐに乗り換えるような男と会うなんて、時間の無駄でしかないけど。 13時55分 王子の乗る馬車が邸に到着した。 軍服?のようなものを着た黒髪で短髪の男の人が1人降りた後、続いて金髪で青い瞳をした長身の男が降りてきた。 たしか、表紙に描かれていたのはこんな顔の男だったと思う。 という事は、これがアレックスで、もう1人は近衛騎士のスクリュー。 「……」 「……」 迎えに出てきたのはいいけれど、挨拶の仕方なんて全く解らない…。今日までこの小説(せかい)で生きてきたシュナの記憶が残っていないんだから。 う~ん… とりあえず、笑っとこう。 「挨拶もできないのか。」 アレックスはボソッと呟いて、邸に入ってしまった。 小説では『シュナのテンションが高すぎて面倒』とか、『ベタベタしつこい』とか、『喋るな』とか散々な扱いをしていたのに、笑顔で静かにしててもこんな扱いなんだ。 性格や態度を改めれば、シュナに対して普通に接するのかと思ったけど、そうではないみたい。 『悪役令嬢に転生した私は、婚約破棄されるはずの王太子に何故か溺愛されてます。』的な小説を友達は沢山よんでたけど、この小説世界ではは成り立たないのだと判明。 サロンには私達2人と、ネロとスクリューがいるだけ。 何も喋る事もないし、どうしようかな。 所詮、もうすぐ聖女に乗り換える男、これから一切口を利かなくても私的には問題ないし…。 さっさと帰ってくれないかな。…とは言えないけども。 「帰る。」 用意したお菓子に手をつけず、お茶を一杯飲んだアレックスが席を立った。 やった!! 「はい、さようなら。お気をつけて。」 私が笑顔で言うと、アレックスの眉間に皺が寄った。 「お嬢様、お見送りに…」 「あぁ…」 見送りに来ない事を怒ってるんだ。小さい男ね。
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