254人が本棚に入れています
本棚に追加
とりあえず、見送りに行こう。
「俺が帰るのがそんなに嬉しいのか?」
笑顔で見送る方がいいと思ったのに、逆効果だったなんて…。この男、いまいちよく分からない。
「殿下は『物わかりの良い女が好きだ』と仰っていたので、実行しているのです。貴方に好かれるためですわ。」
「…っ」
あー…、さらに怖い顔になってしまった。
丁寧に言ったけど、遠回しに嫌味だしね。
本で読んでた時は、シュナが悪女のようだと思ってたけど、彼女の性格をそこまでにしたのはアレックスなのかも。
国民に人気のある王子だって書いてあったけど、第一印象最悪でしかない。
まぁ、アレックスの本性がどんなものでもいい。私の悠々自適な侯爵令嬢ライフの邪魔をするのだけは許さないけどね。
「お忙しいでしょうから、私の事など気にしないでお帰りください。」
「……」
ほんの10分ほど前に不機嫌そうに現れた男は、来たときよりもさらに不機嫌な顔をして帰った。
「お嬢様、せっかく殿下がいらっしゃったのに、お話ししなくて良かったのですか?」
「うん、今日は疲れてたからね。」
ネロはいい人だと思う。
シュナは機嫌が悪くなるとネロに辛く当たってた。それを耐え抜いて、さらに心配までするんだから。
私が死ぬのは遠くない未来だから、それまで我慢してね。
「そだ、さっきのお菓子!美味しそうだったし、早く食べに行きましょう!」
現実世界ではお小遣いなんて貰った事がなかったから、お菓子だって満足に食べられなかった。でも、この世界の私は違う!贅沢出来る環境って素晴らしい!
「おいしーっ!!ネロ!一緒に食べよう!」
「あ…、有難うございます。」
食べ物については少し不安があったけど、よく考えればそんな必要は全くない。
作者が『侯爵邸のご飯は不味い』という設定をしていないのだから、美味しいに決まってるよね。
たしかシュナは美食家で、気に入らないシェフを次々にクビにしていたって書いてあった気がする。
こんなに美味しい料理…、というか、誰かが自分のために時間をかけて作ってくれた料理にケチをつけるなんて酷すぎでしょ。
最初のコメントを投稿しよう!