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心でひっそり鬨の声を上げ、いざ出陣。
「ヒデミツさんは右を! 俺は左を殲滅します!」
「了解!」
「塀の裏に防弾チョッキ置くんで使ってください!」
「ありがとうございます! 代わりにショットガンの弾置いときますね!」
「お、ちょうど無くなりそうだったんで助かります!」
「危ないっ!」
「わっ! ありがとうございます、後ろ無警戒でした」
「ふふ、世が世なら死んでましたよ?」
「かたじけない。でも、何かあればナガノブさんが助けてくれると信じてましたから」
「あそこの木の影、敵が居そうじゃないですか?」
「なら俺が様子見てきます!」
「いや、それはヒデミツさんが危ないですよ!」
「毒見も家臣の仕事ですから! 殿!」
「と、殿なんて、よせやい! ……でも、そこまで言うならお願いします! 何かあれば援護しますね!」
戦いの最中、長信は感じていた。
あまりにも上手くいく連携。初めて会ったとは思えない阿吽の呼吸。会話の心地良さ。
まるで運命の悪戯のように、長信とヒデミツの全てが恐ろしいほど噛み合っている。
そう。例えるなら、前世からの友と邂逅したかのような感覚。
気付けば敵も残り二人。彼らのランク次第ではすでに長信の世界一は確定的だが、最高の美酒を飲むためにここは是非とも勝利して終わりたいところ。
しかしその二人がなかなか厄介だ。
撃っても撃っても銃弾が当たらない。逆にこちらも向こうの攻撃を辛うじて避けられているので、お互いに決め手が無い均衡状態がかれこれ数分間は続いている。
実力からして彼らもヒデミツと同等か、あるいはそれ以上の高ランク者と見て間違いないだろう。万が一どちらかがランク1位である可能性を考えると絶対に負けるわけにはいかない。
「一つ、作戦があります」
ヒデミツが言った。「教えてください」と長信はすぐさま飛びつく。
「ナガノブさんには囮となって、奴らのところへ突っ込んでもらいます」
「囮、ですか」
少々リスキーな気もするが、ヒデミツのことだからちゃんと考えがあるはずだと長信は素直に受け止める。
「近接戦闘に持ち込めば、奴らも銃を捨てて応戦するしかない。そこで、」
「そこで?」
「俺がロケットランチャーで吹き飛ばします」
「なるほど、ロケランで…………え? ロケラン?」
思わず流しそうになるが、おかしさに気付く。
「え? ロケラン? ロケランぶっ放すんですか? 俺が居るのに?」
「まぁ、そうっすね。そういう作戦なんで」
「それ俺ごと吹き飛びますよね?」
「まぁ、その可能性が無いことも無いことも無いとは言い難いかもしれませんね」
「え、どっち? なんか誤魔化そうとしてる?」
「そんなことありますんよ?」
「え? 待って待って。もしかして、裏切ろうとしてる?」
「………………いやいや! そんなまさか!」
「その間は絶対そうじゃん! え、裏切るの!? こんな良い感じでやってきたのに!?」
裏切り。その可能性に今ようやく思い当たる。
よく考えればヒデミツは現在世界4位。彼が1位を狙うなら、長信とは同じチームになった時点でTEAM pointで差をつけられないから、長信より多くのKILL pointを稼ぐ他道はない。
そしてその事実に気付いた瞬間、「裏切り」と「ヒデミツ」という言葉の並びがなぜか、本当になぜか、ものすっごいリアリティを伴って長信に警鐘を鳴らした。
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