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「やばいやばいやばい! 死んじゃう死んじゃう!」
「ヒ、ヒデミツさんっ!」
「回復キット! ナガノブさんの回復キット一個ください!」
「え!? いや、でも俺ももう一個しか持って無いし……自分で使いたいんだけど」
「あー! ケチ!」
「明智!?」
「このままじゃ俺、あっという間にお陀仏ですよ!」
「織田打つ!?」
「何!? 俺何か変なこと言いましたか!? 言ってないですよね!? ほんとなんなんすかさっきから!」
「だからわかんないの! わかんないけど、たぶん運命! 俺はヒデミツさんの何気ない一言で背中がゾワッゾワする星の下に生まれてきたの、たぶん!」
「キモいこと言うのやめてもらえます!?」
不毛なやり取りの間にもどんどん不利に傾く戦況。
痺れを切らしたようにヒデミツが言う。
「あーもうっ! 時間がない! とにかく建物に火を放って、焼き討ち狙いましょう!」
「ちょちょちょっ、待って! 焼き討ちはやめよう? ね? 焼き討ちだけはやめて! 焼き討ちなんて酷いこと二度と言わないで!」
「ハァ!? だったらせめて代案出してくださいよ!」
「うえぇ!? えっと、鉄砲三段撃ち、とか?」
「戦術が古いっ!! というか、二人でどうやってやるんすか!?」
作戦は纏まらず、背中はゾワッゾワし、体力ゲージと残り時間ばかりが削れてゆく。
もはや、これまでか。無念……!
「……あれ? シッ! 静かにしてくださいナガノブさん! 諦めるには早いです!」
「え?」
「音がしませんか?」
「音?」
言われるがまま耳を澄ますと確かに聞こえる、轟々と唸りを上げる悍ましい風切り音。戦国オンラインのプレイヤーなら誰もが知るその音に、長信は大きな歓声を上げた。
「暴風雨キター!!」
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