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戦国オンライン名物「暴風雨」。ごく稀にマップ上に発生し、プレイヤーや障害物、アイテム等を蹂躙して突き進む空の掃除屋。
この暴風雨の気紛れによって、これまで数多のプレイヤーの運命が狂わされてきた。
「見てくださいナガノブさん! 奴らの居る建物が、暴風雨に飲み込まれますよ!」
「うおぉぉっしゃキターーー!! 大逆転チャーーーンス!!! 天は俺たちに味方したようだな!!!」
まるで千人で五万の兵を倒しましたぐらいのテンションで絶叫する。
一階から母の「何時だと思ってるの!」という怒鳴り声がするが、気にしちゃいられない。
「ほら、暴風雨が止みますよ! 追い討ちをかけましょうヒデミツさん!」
嬉々として武器を構え、暴風で崩れた建物目がけて繰り出そうとした瞬間だった。
画面左端から棒状の何かが飛んできて、目の前に着弾したと思ったのも束の間、長信のアバターは体力ゲージ諸共あっけなく吹き飛んだ。
「え……ロケラン? ま、まさか……っ!」
今更気付いたところで時すでに遅し。耳に届くは、ヒデミツの人が変わったような下品な笑い声。
「はーはっはっは! 悲願成就を目前にして油断したなナガノブ! これで天下統一の夢は俺のものだぁ!!」
「お、おのれヒデミツゥッ!!!」
怒り狂う長信と高らかに勝ち名乗りを上げるヒデミツ。
長信があれほど渇望した世界一の栄光は、今、確かにヒデミツの手中に収まった。
がその直後。右下のヒデミツ視点の画面に深緑色をした何かが飛来した。
深緑の物体はヒデミツのアバター目がけて直進し、それをロケットランチャーだと認識した次の瞬間には彼の脇腹に思い切りブッ刺さり、爆発し、一発で体力ゲージを根こそぎ持っていってしまった。
「Game Over」の文字が上からゆっくりとフェードインしてくる。
「あー、その……なんというか……短い天下でしたね」
「……そっすね」
「俺が言うのもなんですけど、ドンマイです」
「はい……あの、さっきはすみませんでした、ナガノブさん」
「いえ、こちらこそ」
なんとも言えない気まずさが二人の間に漂うが、これもまたそうなる運命だったのだろう。
自慢の4K画面には「Rank1 康家」「Rank2 Yoshihide」という古風な名前の下に、「Rank3 ナガノブ」の名が寂しげに踊っていた。
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