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「あと……あと一勝……!」
小学生の頃から愛用しているゲーム部屋という名の城で、小野田長信(27歳・無職)は緊張に震える声を漏らした。
お年玉を貯めて買った4Kテレビには、オンライン対戦型シューティングゲーム『戦国オンライン』のリザルト画面が映し出されている。
今しがたの対戦で勝利した結果、暫定世界ランク2位。天守閣のそのまたてっぺんはもう目の前だ。
ふと、ここに至るまでの困難が走馬灯のように蘇る。
いい加減職に就けと父に怒鳴られ、母に泣かれ。妹の市子には「終わりの大うつけ」と馬鹿にされ……。
それでも長信はひたすらテレビ画面の前に齧り付き、今ようやく全国統一、いや、全世界統一の大願を果たそうとしている。
現在時刻は23時40分。おそらく次が今ランクマッチシーズン最後の対戦だろう。終われば結果の集計が行われ、最終順位が確定することとなる。
勝てば世界一。負ければ、ただの名もなき敗残兵。まさに天下分け目の戦いと言ったところか。
深呼吸を一つし、コントローラーで「対戦を始める」を選択。
このゲームは一度に50人ものプレイヤーが入り乱れるサバイバル形式であるため、マッチングするまでに平均数十秒ほどの時間を要するが、今はそれが数分にも、数十分にも感じられる。
長い長い待ち時間の末いよいよマッチングは完了しそのまま対戦準備画面へと移行。
長信はすぐさま画面左端「パートナー」欄を確認し、そこに表示された「ヒデミツ Rank4」の文字を見るや否や大袈裟なほどのガッツポーズを繰り出した。
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