第3話 娘は喉風邪中。

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第3話 娘は喉風邪中。

「社員旅行のこと、すっかり忘れてたわ」 「おれも忘れかけてた。先週は資格試験があったし、そっちのことで頭がいっぱいで」  そうそう、その研修を受けるために夫ったら東京に行ったりしていたし。  そのあいだにわりと大きめの地震があって「ビルってずっと揺れてるからマジ怖い……」って震えていた夫だけど、その研修が一週間ズレていたら今度は台風にぶち当たっていたから、結果的によかったかなって感じだったのよね。  おかげで夫に週末、子供たちを預けて原稿できないかと目論んでいたわたしは、当てが外れて泣きながら5月末〆切の原稿を書き終わらせる羽目に陥ったが。  そのときわずらった腱鞘炎も未だ完全によくなっていないんだよなぁと思いつつ、「旅行かぁ」とうめいてしまう。 「確か行き先は沖縄じゃなかったっけ?」 「そうそう」 「待ってくれよ、マジでか。『全国都道府県で旅行しちゃいけないところランキング~!』なんてものがあるとしたら、今現在、沖縄は圧倒的一位に輝くヤバイ状況だぞ。マジで行くの?」  5月に5類相当になった新型コロナウイルス君だけど、まぁ~マスクを外しはじめて、あれこれの活動が活発になってきたから、やっぱり増えてきたよね感染者。  中でも沖縄はすでに医療崩壊寸前と騒がれていて、正直、今近づいていい場所とは思えないんだが。 「え、そうなの? 沖縄でコロナはやってる感じ?」 「ああ、我が家はテレビを見る習慣があまりないし、夫氏はTwitterもやらないからな……。医療関係者の方々こぞって沖縄ヤバイというのをツイートしているんだよ。沖縄は県民のワクチン接種率もあんまり高くないからねぇ……」 「そうなのかぁ。でもうちの社長のことだからキャンセルにはしないわな」  だよねぇ。今頃キャンセルなんて言ったらかなりの料金も取られちゃうだろうし。移動のための大型バスも予約しているって言うし……。 「こうなったら、とにかく感染に気をつけるしかないね。政府はマスク外していいよと言っているけど、お願いだから基本マスクで過ごして。ほぼ毎日のように飲みとか海水浴とかあるだろうから難しいとは思うんだけども」 「うーん、難しいだろうけど、努力するわ」  ということで夫は仕事に行き、息子を送り出す。 「ママ、今日の五時間目が授業参観ね」 「うん、多目的ホールでやるんだよね。忘れてないよ。命の授業だっけ?」 「あ、でも変更になって体育らしい。なんかママがおれをおんぶするらしい」  ――いや聞いてねぇし! もう30キロを越えている貴様を154cmのこのわたしがおんぶできると思うか!?  だが本当に体育に変更で、親が子を負ぶってなにかしら競技をするようなことがあったら大変だ。  ということで出発前の息子をひとまずおんぶできるかやってみたよ。 「ぐぅ、重い……! 成長したな○市……! う、でも、なんとか、うおっ、立てた――!」 「おお~……!」  息子もわたしの背中で歓声を上げてら。 「よし、これなら本番も大丈夫だわ。気をつけて行っておいでね」 「はーい、行ってきま~す」 「あ、ちょっと待ってハンカチ持った?」 「持った~」 「じゃあ見せてごらん」 「あ、やっぱり忘れてた~」  忘れてた~、じゃねぇよ、常習犯が! チッ! ちゃんと持って行けよ!  ということで息子を送り出し、朝の家事を終わらせて、わたしは娘を連れて小児科へ。  コロナが5類になってマスクを取っての活動が多くなったせいか、とにかく子供の発熱が多いらしい今日この頃。  ヘルパンギーナやらインフルエンザやらRSウイルスやらが流行していると聞いているから、小児科もさぞ混んでいるかと思ったら、10時の時点で待合室に患者は0人! それが逆に怖かったよね……なんでひとがいないの……。 「うん、ヘルパンギーナとかじゃないですね。でも喉が赤くなっているので、抗生剤を出します。咳と、鼻水も少しあるかな。お薬出しますね~」  ということでさくさく処方してくださった先生。そのあとの薬局はそこそこ混んでいたから待たされたけど、子供ももうすぐ10歳ともなると、タブレットとかで勝手に遊んで静かにしてくれるから助かるわね。  というわけで娘は寝ていてもらって、午後になってわたしは授業参観のため小学校へ。30キロをおんぶして走る覚悟を決めながら……!
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