この世界は平等じゃない。

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この世界は平等じゃない。

おかしいと思う。自分たちだけよければいいという考えは。 悪魔だったら空を飛んでよくて、僕たち人間はダメ。 そんな決まり、僕がぶっ壊す!! そう!僕こそが…正義のヒーローだ! なんて言っても、ごくごく普通の小学生の僕はヒーローなんかじゃないし、こんなことを言っても何も変わらないのは、知っている。 …。話を戻そう。 掟を破って空へ飛んだものは誰一人として戻ってきていない。考えられる理由はただ一つ。 悪魔に、喰われる。 お父さんもお母さんも「恐ろしいこと」しか言わないけど、勘のいい子供に生まれてしまった僕は、なんとなく想像がつく。きっと「恐ろしいこと」という言葉自体はあってるはず。でも、 好奇心は、止められない! ここはどこだ? ある廃学校の玄関に、5人の小学生が集められていた。 その5人が囲むように見つめていたのは、ドアに変装した悪魔のボス、アドーラだ。 「全員そろったようだね。では、話を始めようか。」 なぜドアなのか、そもそもアドーラとはだれなのか、そしていきなり集められたここはどこなのか、それは少し、時を遡ぼる…。                 * うっ…。ここは、どこだ?ある部屋の中で、紀藤直斗は目を覚ました。 頭が痛くて、何も考えられない。だけどだんだん、頭の中の霧が晴れてきたぞ。そうだ、思い出した。 皆の憧れである空の世界の番人、龍川誠さんに会いに行っていたんだ。それで…。それで、いきなり悪魔の中のボス、アドーラの手下がやって、なぜか僕を攫おうとした。誠さんが助けてくれたけど、その直後スプレーをかけられ、誠さんと一緒に気絶した…。ここには僕しかいないけど、そういえば誠さんはどこだ? まったく意味不明だ。アドーラの手下、別名アドラー達の目的は一体何なんだ? 頭の中が「?」でいっぱいだ。考えること全ての語尾に「?」がつく。 いや、今考えても仕方がない。とりあえず今のことに集中しよう。 閉じ込められたような部屋を見渡すと、白いテーブルの上にVRゴーグルが置いてある。横にひらがなで、「そうちゃくしてください」と書かれていた。 何が起きているのかはわからないが、今は言うことを聞いておこう。 VRゴーグルをつけると暗闇の中に直斗を含め、五人の小学生が現れた。 周りを見渡しているおとなしそうな女の子、女優のような笑顔で立っている美女、明らかに部活に入っているのがわかるくらい元気そうな男の子。 そして、集団から少し離れたところで何かをじっと見据えているミステリアスな男の子。なんだか僕を見ているような気もする。 なんだか地味に怖いし、不気味だ。 全員何か共通点がありそうだと思ったが、見た目は関係なさそうだ。 そんなことを考えていると、中央にド派手な赤と青の女性が現れた。一瞬驚いたが、ここはVRの世界だ。深呼吸をし、心を落ち着かせる。改めてその女性を見ると、うわぁという声が思わず出た。 前髪が青、後ろ髪が赤、服は白いTシャツに、青の上着。ズボンは血を思わせる毒々しい赤色で、右足の靴は赤、左足の靴が青。そして何より印象的なのは、瞳の色だ。 ギロリとした目に、なんと右目は青、左目は赤というオッドアイ。驚きのあまり見つめていると、怒鳴られた。 「そこのヴォーイよぉ、アタスの顔、いつまで見てんだい!?」 ヴォーイ?英語でBoyの男の子って意味?見た目だけじゃなく、性格まで独特だな…。それに自分の事をアタスって…。そもそもこっちはいきなりここに連れてこられて、自体の整理がついてないんだよ!と言いたかったが、やめておいた。アドーラの手下かもしれない。身構えると、その女性は笑った。 「アハハハ!!まさかアタスを警戒してる?きっとアドーラの手下、アドラーだと思ったんだろぉ?」 図星だ。 「ザッツライトォォ!アタスはアドーラ様の右腕、ルー・レドだよォォォォォ!」 やっぱりアドーラの手下だ。しかも右腕。 厄介なことに巻き込まれたな…。 そして名前は見ての通り、青と赤だから青のブルーのルーを使って名字がルー。そして赤のレッドの「ッ」をなくし、レドってわけか。本名なのかな?変な名前。 「アタスはみぃーんなが揃うのを足を長くして待ってたんだよぉ?」 それを言うなら首じゃないかな?思わず、聞いてしまった。 「それを言うなら首じゃないですか?」 それを聞いたレドはニヤニヤと笑い、 「アタスは細けぇことはぁ、気にしないんだよぉ?」 と答えた。イマイチ納得できない答えだったが、これ以上聞いても何も変わらなそうだ。 黙りこくった直斗を無視するかのように、レドは続ける。 「せっかくみぃーんな集まったんだ。自己紹介でもやりなよぉ?」 確かにそうだ。でも、みんなお互いのことを見るだけで、誰もしようとしない。 遠慮し合っている感じだ。 「誰もやんねぇのかぃ?しょーがないねぇ。アタスが指名してやるよぉ。じゃあぁぁそこのおとなしそうなガァルからぁ!そこからは逆時計回りなぁ!いいかぃぃ?」 逆時計回りの自己紹介 時計回りじゃなくて逆時計回り?まぁ、こんな独特な人だ。変に場を盛り上げようとしててもおかしくはないか…。 逆時計回りというレドの意見に反対するものはおらず、自己紹介が始まった。 それにしても男の子のことはヴォーイと言って、女の子のことはガァルか…。 何かとすごいな。 色々考えていると、その子が言い始めた。 「私は、五十嵐李柏(いがらしりはく)です。よろしくお願いします。」 次はあの美女だ。 「夜海瑠奈(ようみるな)よ。よろしくね。」 次はあの部活少年。 「僕は石橋楓(いしばしかえで)だよ。よろしく。」 次は僕だ。妙に緊張するな 「僕は紀藤直斗(きとうなおと)です。よっ、よろしく。」 しまったぁ!緊張しすぎて噛んでしまった。マジで最悪だ。いや、あまりみんな気にしてないようだ。よかった…。一人でそんな事を考えていると、直斗がずっと気になっていたあのミステリアスな少年の番だ。 「おれは蓮。(れん)」 おっ、終わり?短いけど名前だけ知れただけいいか…。 渋々納得し、全員の名前を考える。 五十嵐李柏、夜海瑠奈、石橋楓、蓮、そして僕、紀藤直斗。 見た目に引き続き、名前は関係なさそうだ。
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