1月

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1月

[1日]  布団の中で、元日の朝を迎えた。枕時計の長針と短針が「7時45分」を刻んでいた。洗面所に入り、顔を洗った。屋内の吊るし衣類を露台の竿に移した。台所へ行き、電気ケトルにミネラル水を注いだ。沸騰後、ダークローストを淹れた。テープに録音した『今日は一日〔花の82年組〕三昧』を聴きながら、熱いやつを飲んだ。ラジカセの電源を切り、年賀メールの作成と送信を始めた。  ポータブルプレーヤーの電源を「ON」にした。二杯目を飲みつつ、新海誠監督の『天気の子』(の終盤)を観る。けがれ切った48歳のおっさんには、気恥ずかしいシーンが幾つもあったが、そんなことは評価にはまったく関係がない。人物と物語も良かったが、映像に一層の魅力を感じた。なるほど。これはアニメーション以外には描き出せない領域である。声の出演も豪華な顔ぶれ。巨匠の配役だ。  簡単な食事を済ませてから、身支度を整えた。最後のカギをかけてから、家を離れた。隣り町の貸し円盤(DVD)屋に足を進め、円盤5枚を返却箱におさめた。検索機を動かし、来週借りる3枚を決めた。今週の3枚を借りてから、店を出た。  帰路の途中、新本屋に寄り、雑誌を一冊買った。ショッピングセンターも弁当屋もスーパーも、今日は商売をやっていない。コンビニに寄り、食品を買った。酒食の後に、スパイ大作戦を観るか、ゴジラを観るか、迷っている。 ♞今宵の酒は山崎の「磨かれて、澄みきった日本の水」割り。飯は天丼弁当。 be39f2b0-6067-4f9f-93cc-9f8cb2479813 [2日]  あかなめ食堂の暖簾を割り、空いている椅子に腰をおろした。店内盛況。常連代表、蛇頭の用心棒(コブラガール)が、池波正太郎本人…としか思えぬ和服の紳士と清酒を酌み交わしていた。等身大ラゴン、同ウー、同ジャミラ、同ギガスが、豚汁定食(日替わり焼魚と温泉卵付き)をもりもり食べていた。フジ、アンヌ、丘の三隊員が茶漬け(梅・昆布・鮭)をさらさらと流し込んでいた。  俺は〔油揚げと芹のベーコン鍋〕で飯を食べることにした。食前に熱燗二合。亭主が新年の挨拶といっしょに〔たたき長芋のもずく和え〕と〔ブロッコリーのアンチョビ炒め〕を出してくれた。まったくありがたいことである。早速箸立てに指先を伸ばした。途端、全てがであることを俺は悟った……。  枕時計が、朝の8時を示していた。洗顔後、ケトルに水を足した。沸き立ての湯で、即席コーヒーを淹れた。菓子パンを食べながら、熱いやつを飲んだ。二杯目を居室に運んだ。ポータブルの電源を入れた。自動的に『ゴジラVSモスラ』の再生が始まる。1992年公開の映画。約30年ぶりの再会である。主演の別所哲也と小林聡美も若い。気がつけば、俺も五十路が近い。時の流れは純粋に残酷である。新怪獣バトラ登場。という設定は面白い。  最後のカギをかけてから、部屋を離れた。隣り町の新本屋に足を進め、週刊現代を買った。山﨑努のインタビューが載っているからである。店を出て、我が町の方角へ歩いた。ラジオの電源を入れた。インテリさんたちのインテリ然とした声と話を聴きながら、歩行を続けた。聴いている内に、こちらまで賢くなったような錯覚を覚えるが、盛んに飛び出す「なので」がそれを削ぐ。  ショッピングセンターの中にあるパン屋に行き、お値打ちドーナツセットを買った。帰路の途中、スーパーとコンビニに寄った。部屋に戻り、シャワーを浴びた。酒食の後に『スパイ大作戦/王家の血 前篇』を観るつもりである。 ♞国産洋酒(ウイスキー)の軟水割り。鮪の刺身。ソースカツ弁当とおにぎり。
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