5月

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[12日・13日]  歩数計の付属時計が「朝の5時40分」を示していた。家を離れ、地元駅までてくてく歩く。道中、ほぼ毎週利用していた店の「クローズ告知」を見かけて、刹那愕然となる。ある程度予想(覚悟)はしていたものの、それが現実と化すのは、やはりショックだ。暗澹たる気持ちを抱えながら、歩廊に足を進めた。電車に乗り、本を開いたが、読みに集中できない。閉じざまに、ため息をつく。  業務終了後、一番近い駅まで歩いた。大自然のトラブル発生のため、電車の運行が乱れていた。埋め込み型の画面に映し出される『エヴァンゲリオン』の宣伝映像を眺めながら、いつもとは異なる車内時間を過ごした。地元駅下車。付属時計が「夜の7時半」を示していた。改札を抜けて、豚カツ屋の暖簾を割る。レモンサワーで渇いた喉を潤し、メンチカツと豚汁で飯を食べた。  家に戻り、浴室でシャワーをあびた。体を拭き、服を着た。ポータブルDVDプレーヤーの電源を入れた。自動的に『新 必殺仕置人』(の9枚目)の再生が始まる。第32話「阿呆無用」を観る。遠征篇の一種だが、独自の工夫が施されている。鑑賞後、歯を磨いた。ラジオを(イヤホンで)聴きながら、眠気の訪れを待った。  翌朝8時に起床。天気は一応晴れ。洗顔後、身支度を整えた。数日分の衣類を担いで、近所のコインランドリーへ向かった。平日のランドリーは空いている。水洗い専用マシンに担いできたものを放り込み、持参の粉末洗剤を撒いた。指定の金額を投入してから、起動ボタンを押した。所要時間は約30分。  家に戻った。テープに録音したマーチンの番組を聴きながら、バルコニーの物干し竿に脱水衣類を吊るした。明日、明後日は雨天だそうである。屋外干しの機会は今日しかない。終了後、屋根裏部屋(ロフト)に上がり、本棚の整理をする。この内の何冊かは処分することになるだろう。作業後、近所のレストランへ体を運んだ。チキンステーキ、にんにくソースで飯を三杯。食後にコーヒーを二杯。 ♞今夜は、柳楽優弥&田中泯主演の『HOKUSAI』を観るつもりである。  食後、一旦テーブルの上を片づけた。ウイスキーのボトルを切り、水割りを作った。呑みながら、さいとう・たかをの『ゴルゴ13/見えない軍隊』を再読した。1987年1月に発表された作品である。愛銃アーマーライトのに対して、ゴルゴは戦わずに近くの山へ逃げ込む。無論ただの「逃げ」ではない。あくまでも「攻めるための逃げ」なのである。今回の依頼者、ジョー・モンタナの最後の台詞「あんたは……魔術師だぜ……」がいい。  目蓋を開けると、朝になっていた。枕時計が「6時」を示していた。厠に入り、用を済ませた。布団に戻り、再び目蓋を閉じた。気がつくと、8時を過ぎていた。洗顔後、台所のケトルに水を足す。沸き立ての湯で、即席コーヒーを淹れた。山崎製パン社の「六角チョコパイ」を食べながら、熱いやつを飲む。二杯目を居室に運んだ。飲みつつ、同巻収録の『ハリウッド・シンデレラ』を読んだ。映画界の暗闘劇。ゴルゴ氏の出番は少なめだが、存在感は抜群である。  雨が降り出す前に出かけることにした。草小説の文案を練りながら、飲食街に至る道を歩く。途中、歯医者に寄り、治療の予約をした。ビストロ(うまいもの屋)風の食堂に入り、日替わりランチを頼んだ。待っている間、テレビを眺める。なにやらをやっていた。特に面白いとも思えないが、これは俺の感性が鈍いからだろう。本日の主菜(メイン)は、牛すじの煮込みであった。俄然酒が欲しくなったが、懸命に我慢。店を出ると、雨がぱらつき始めていた。 ♞仲代達矢、宇野重吉、三國連太郎共演の『金環蝕』を観るつもりである。 90a5c85f-0d45-4913-904d-31b8e1be5a87
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