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結局。
私たちが寝ているベッドで三人並んで寝ることになった。
キングサイズだから、大人三人でも寝られなくはない……けれど。
「痛っ……。テオ、痛くしないで……! 食い込んじゃう!」
「ごめん、姉さん……。こっちの方が、痛くないかな……?」
「あっ、ちょっと……!」
常夜灯のついた薄暗い寝室で、ベッドのスプリングが軋む。
大人三人が乗れば、当然の事で……。
「もう! 手首が痛いってば!」
さっきから、引っ張られてばかりなのだ。
「だって、 俺は勝手に姉さんに触れないからさ〜。痛かったら、 姉さんがこっちに来て……?」
テオは、やっぱり危険だ……!
わかっているつもりだったのに、またテオの術中にハマってしまうとは……。
義姉として情けない。
「テオ、リアから離れろ!」
「離れたら姉さんがまた痛くなっちゃうよ? どうする? 兄さんが俺の隣に来て俺を止めてる? それとも、姉さんの隣に行って抱きしめてる? 俺はどっちでもいいよ」
テオに挑発されて、お兄様は考え込んでしまった。
「兄さん、早くこっちに来てよ♡」
「お、お兄様……助けてください!」
「ど、どうしたらーー!?」
そんなやりとりが、数十分続いた……。
数時間後、私はテオとお兄様に挟まれて眠れない夜が続いていた。
テオと私は、手錠のせいで向かい合って寝るしかないし、お兄様は背中の方から私を抱きしめるようにして眠っている。
ああ、早く朝にならないかな……。
「姉さん」
テオに言われて、どきりとした。
起きていたのか。
お兄様は、後ろで寝息を立てている。
滅多な事では起きないところは、お父様と似ているかもしれない。
「……兄さんを選んでくれて、ありがと」
「テオ……?」
「…………」
テオは黙って目を瞑り、「おやすみ」とだけ呟いて眠ってしまった。
どういう、事なんだろう?
そういえば……。
テオはお兄様のものを欲しがったり、好きになったりする傾向があった。
それは、あの事件で痛いほどよくわかった。
そして私は、お兄様を愛しているのに義弟を見捨てることができない。
昔からテオは私の心の拠り所だったのだ。
一緒に住む事を許してくれたお兄様には感謝している。
お兄様の心はどうなのだろうか。
もし、お兄様にとって理由もなくかけがえのない家族が私なのだとしたら。
妻とか義妹とか、そんな枠を超えたものだとしたら。
誰一人欠ける事のできない私たちは、なんて罪深い関係なのだろうか。
── 偽りのトリアーダ 完 ──
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