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吐息が漏れる。
甘く深い、とろけるようなキスに意識を持っていかれそうになる。
堪えきれず、私は義兄を半ば強引に突き放した。
「お兄様……。こういう事は……もう……」
俯いたまま懇願した。しかし、私はその先を言えずにいた。
言ったところで、何を言われるかわかっていたからだ。
「もう……なんだ?」
「……」
「戦災孤児のおまえを養いここまで育て、しかもゴンドル族であるおまえを匿っている恩を仇で返すつもりか……?」
「決して、そういうつもりでは……!」
数ヶ月前に養父が亡くなってから、義兄は変わってしまった。私が反発したりすると、こうやってゴンドル族の事を持ち出し、責め立てるようになってしまったのだ。
何事もなければ優しい義兄なのに、毎日唇を求められ、行動を制限され、私の心はすり減っていくばかりだった。
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