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あとがき
本作に最後までお目通しいただき、本当にありがとうございました。
この作品は『緑の風、金の笛』とほぼ同時に、ざっくりプロットができていました。暁斗と奏人の『後日談集』2022年4月分にも、中田喜直の「さくら横ちょう」を使ったので、この時に第1話を書きました。その後、ありていに言って放置していたのは、私自身が歌うことに苦労しているため、歌手になることを目指す若い子を書きづらかったのが1番の理由です。また、この物語は高崎奏人というキャラの人生に沿ってプロットが立っているので、『あきとかな』本編の中で奏人が暁斗に語ったとおり、奏人が先輩を傷つけ転学するという結末しかあり得ません。それも少しきつかったのが2つ目の理由でした。
しばらく寝かせておいて書けるようになったかといえば、全くそうではなかったというのが事実です。他サイトのコンテストに合わせてやや強引に仕上げ、エブリスタで連載しながらかなり手を入れましたが、変にテンションが上がる半面、辛みも半端なかった(笑)。読み物として面白く書けたという自信もあまり無いですし、最後までおつきあいくださった皆様には、ほとんど申し訳ないくらいです。
しかし苦労した甲斐があって(?)、主人公の三喜雄が、奏人に負けないくらい勝手に動く、輪郭のはっきりしたキャラに育ってくれました。言うまでもなく三喜雄はポテンシャルが高いので、優れたハイバリトンとして、また暁斗とはちょっと別種の毒持ちボケ風味男子にすくすく成長中です。最近『後日談集』に34歳の三喜雄をチラ出ししましたが、できれば12月に、札幌を訪れた奏人の前で、大曲を歌わせたいと思っています。ジャンル横断を強いてしまいますが、大人になった三喜雄に会いに来ていただければ嬉しいです。
この物語は2008年の設定です。ですので高校生たちは、ガラケーでメールのやり取りをしています。天候も今より涼しいとし、札幌北星高校グリークラブの選曲も、やや古い目を意識しました(合唱コンクールの課題曲・自由曲も2008年のデータを拾いました。便利な世の中です)。
あらためまして、三喜雄と奏人、札幌北星高校グリークラブの面々を贔屓にしていただきましたこと、心より感謝いたします。
以下、参考にした楽譜です。加藤周一「さくら横ちょう」は、表記を現代読みに変えています。
中田喜直歌曲集(カワイ出版)
日本歌曲選集2、ヘンデルアリア選集1、フォーレ歌曲集、フォーレ レクイエム、ベッリーニ歌曲集(全音楽出版社)
“Tenebrae factae sunt” はYouTubeで楽譜入り画像を見つけました。
2023.8.25 穂祥舞
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