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「ねえ、セリーヌ・・・ぼくの曲を歌ってくれない?」
「いつも歌わせてもらってるわ」
「仮歌じゃなくって、君のために書きたいんだ」
「わたしのために?」
「君は、本当は歌手になりたかったんだろ?だって、あれだけ歌えるんだし」
セリーヌは、すぐには答えを返さなかった。
そして沈黙の後、彼女はゆっくりと、ため息を吐くように答えた。
「そう、本当は・・・あなたの歌を歌いたい。本録りが終わって私の歌が消される時、ちょっと悲しくなっちゃう」
「じゃあ、今度スティーブに話してみるよ」
「でも・・・」
「でも?」
「あなたの奥さんだから、しゃしゃり出てるって・・・ほら、ビートルズの奥さんたちみたいに・・・また調子に乗ってるって攻撃されるのが怖いの」
「じゃあ、ぼくの名前は伏せよう。ぼくも、自分の才能に疑問を感じるんだ。自分が目が見えないから、みんなが同情してくれてるだけじゃないかって」
「そんなことないわ!私があなたの音楽を好きになったとき、そのことを知らなかった」
「君もぼくの音楽を心の耳で聞いてくれていたんだね。純粋にぼくの音楽を認めてくれたんだ。ぼくも自分の音楽にちゃんと価値があるってことを試してみたい。君の声だって、きっとみんなに認められるよ。同情もない、やっかみもない、ふたりの新人、無名の作曲家と歌手として挑戦してみよう!」
オスカーはセリーヌを優しく抱き寄せた。
「これからも、よろしく!」
セリーヌは、オスカーのおでこにキスをして言った。
「こちらこそ、よろしく!」
〜終わり〜
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