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オスカーが5才くらいのある日、テレビでバスケットボールの試合が中継されていた。
スピーカーから流れ出るスタジアムの歓声を聞きながら、幼いオスカーは上手にボールをドリブルして言った。
「ママ、ぼくはいつかマジック・ジョンソンみたいになるんだ!」
しかし、ボールはオスカーのつま先にあたり、どこかに転がっていった。
オスカーには、ボールがどこにいったのか、わからなかった。
オスカーの見えない目から、涙がこぼれた。
母親は、オスカーの肩を抱いて言った。
「神さまはうっかり、おまえの目に光と色をあげるのを忘れちゃったの」
オスカーは泣きながら、母親を叩いて言った。
「神さまのくせに、どうしてそんな大事なことを忘れたりするのさ!」
母親は、息子を椅子に座らせた。
「手を伸ばしてごらん」
オスカーが手を伸ばすと、冷たい小さな板が並んでいた。
それを押すと、きれいな音が鳴った。
オスカーがたずねた。
「ピアノ?」
母親が答えた。
「そう、ピアノよ」
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