2

1/2
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

2

オスカーが5才くらいのある日、テレビでバスケットボールの試合が中継されていた。 スピーカーから流れ出るスタジアムの歓声を聞きながら、幼いオスカーは上手にボールをドリブルして言った。 「ママ、ぼくはいつかマジック・ジョンソンみたいになるんだ!」 しかし、ボールはオスカーのつま先にあたり、どこかに転がっていった。 オスカーには、ボールがどこにいったのか、わからなかった。 オスカーの見えない目から、涙がこぼれた。 母親は、オスカーの肩を抱いて言った。 「神さまはうっかり、おまえの目に光と色をあげるのを忘れちゃったの」 オスカーは泣きながら、母親を叩いて言った。 「神さまのくせに、どうしてそんな大事なことを忘れたりするのさ!」 母親は、息子を椅子に座らせた。 「手を伸ばしてごらん」 オスカーが手を伸ばすと、冷たい小さな板が並んでいた。 それを押すと、きれいな音が鳴った。 オスカーがたずねた。 「ピアノ?」 母親が答えた。 「そう、ピアノよ」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!