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「そんなまさか。ロードの聞き間違いでは?」
「そうかな? そうだね。失礼。ミス・ドロシー・アスターも『ええ、あんな胸なし女、早く忘れてわたくしと結婚しましょう?』と言っていたものだから勘違いしてしまったよ」
お前も蝋人形にしてやろうか!
ヴィンセントとわたくしは完全に作り笑いをし合っていた。これはもうダンス室に戻ったら言いふらされているパターンかもしれない。最悪だ。けれどどうせ遅かれ早かれ広まることだ。
わたくしは作り笑いをやめて、毅然としつつ微笑みを浮かべた。
「失礼しました。わたくしの胸が小さいという理由で婚約破棄したいそうです。ミス・ドロシーに乗り換えたいと」
「はあ。ううん。僕だったら選択を誤ったりしないけどね。君はあのふたりより頭がよさそうだし」
ヴィンセントは困り顔からさわやかな笑顔に表情を変える。
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