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青は似合わないのよ
「そのままコレクションとして楽しんだり、原石をご自分で研磨してルースにされる方や、好きなルースを買って職人に依頼してジュエリーにされる方などいらっしゃいますよ」
かたわらのヴィンセントに尋ねたら、商品のテーブルを挟んで向こう側にいる宝石商も答えてくれた。眼鏡をかけた中年の男性で、隣には同じ年頃の女性が立っている。
「そうなのね。ありがとう」
家にある宝石はもうネックレスやイヤリングになっているので、こういう世界があることを知らなかった。そのジュエリーも、代々家に受け継がれているものとか、新しく選ぶときも自分の好みというよりは家の名に恥じないものをという基準だったから、心躍ることは少なかった。
そうしてあらためて見てみる。この宝石商のテーブルは研磨した宝石、つまりルースが主のようで、色や形の違うルースがケースに入って整然と並べられている。
その中でひときわ深い色の宝石に目が止まった。滴型で、濃い青の中によく見ると緑も感じるような不思議な色をしている。
「気になったものは手に取ってどうぞ。ケースもあけましょうか?」
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