少年冒険家と奇妙な村

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それから数十年が経ち。 「お父さーん! 早くー!!」 「すぐ行くから待って。 えっとー・・・」 ギャリーは妻である村長の娘アンナとメアリーを連れて街へと来ていた。 かつてクリストファーとアンナが住んでいた街だ。 交通機関がまとまっている場所でギャリーは地図を探している。 「マップあった! まぁないと思うけど一応・・・。 って、ある!?」 場所は数十年経った今でも憶えているため、念のため確認してみるだけのつもりだった。 まだ若かった頃は地図に記載されていなかったが今は機械の村が載っていたのだ。 「村長さん、公に発表したんだ」 自分で提案したこととはいえ、実際目で確認すると嬉しくなった。 「ギャリー、もうバスが出ちゃうわよー」 「バス?」 アンナに呼ばれそちらを見ると機械の村行きのバスが出ようとしていた。 「バスまで出ているのか! そこまで有名になったんだ」 「お父さんが言っていた機械だらけの村だって! 早く行きたーい!!」 バスに乗り込むとはしゃぐメアリーを膝の上に乗せ出発。 アンナとは初めて会った時以来連絡を取る機会が多くなり、自然と距離も近くなって結婚することになった。 それからアンナはギャリーのいる街で住むことになりこの街から離れていた。 だから村長のもとへは一度も戻っておらず、孫のメアリーを見せにいくのも初めて。 バスはほぼ満席で村へ着くと多くの観光客で賑わいを見せていた。 「凄い。 当時では考えられなかったことだ」 「私もここまで有名になるとは思わなかったわ。 誇らしいわね」 中へ入ると観光客と機械が分かるようになっていた。 機械で作られた人の胸元には機械だと分かるようバッジが付いている。 ―――結局機械だということも隠さず公にするようにしたんだ。 朧げではあるが以前見た村人がそのままの姿で歩いていたりする。 おそらくメンテナンスは定期的に行っているのだろう。 多少ガタが見えるところもあるが、基本的には元気そうだった。 ―――機械なのに元気そうって、何だか面白いな。 「お父さん、お母さん! 早く見て回りたい!!」 「あぁ。 でもその前に会いに行きたい人がいるんだ」 三人は村長のもとへと向かった。 最後にここへ来たのは約15年前。 もう随分歳を取ってしまい杖を突かないと歩けない。 ただそれでも面影は十分残っているし、瞳の奥の光はまだ輝きを失っていなかった。 「おぉ・・・」 「ほら、メアリー。 貴女のおじいちゃんよ」 「おじい、ちゃん・・・?」 メアリーは不安そうにしていたがアンナが優しくそう言うと村長のもとへと駆けていった。 「メアリーを最初に会わせるのはさっきの街のご両親じゃなくてよかったの?」 「よかったの。 最初にメアリーを見せたいと思ったのは育ての親じゃなくて生みの親だったから」 「そっか」 「ほら。 アンナもギャリーも来なさい」 この後は村長の妻も合わせこの時間を楽しんだ。 「ちょっとお手洗いへ行ってきます」 「あぁ。 お手洗いなら部屋を出て左だよ」 「あの、ここのお手洗いももしかして・・・」 「はっは。 有難いことに観光客が増えてお手洗いは全て通常に戻したよ」 「それはよかったです」 部屋を出るとある人とすれ違った。 15年経って大分姿は変わっていたがギャリーは何となく気付くことができた。 「・・・もしかしてクリストファー?」 「・・・え? もしかしてギャリー兄さん!? 今日孫を連れてくる人ってお兄さんだったの!?」 声変わりして背も高くなっている。 話を聞くと今は村長の世話係としてここで働いているらしい。 クリストファーもこの村が気に入ったようだ。 「お兄さんは今でも旅を続けているの?」 「あー。 そう言えばメアリーが生まれてきてから旅はしなくなったな」 「なら再開すればいいじゃん。 今度は一人旅じゃなくて家族を連れてさ」 「それも楽しそうでいいかも」 「でしょ! お兄さんは今でも変わったものが好き?」 「あぁ。 変わったものが好き過ぎて奇抜な服や奇抜なものがよく目に留まるんだ。 買おうとするけど妻に止められてさ」 「そこまでなんだ」 「物だけでなく人、街、変わったものは本当に素晴らしいと思う。 変わりものだということを恥ずかしがる必要なんてないんだ。 それがそのものの特徴で一番の魅力的な部分なんだから」 変わったところを公にしこの街は成功したのだ。 だから変わったものはそれ自身の武器でもあり他に真似されず誇らしいと思った。 「だから俺はこれからも変わったものを否定せず好きでい続けるよ」                              -END-
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