少年冒険家と奇妙な村

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「クリストファーが二人・・・ッ!?」 クリストファーとアンナは体型や服装は違うが顔は本当にそっくりなのだ。 それはただ似ている人というレベルからは離れていた。 驚いているベッキーを見て村長が問いかける。 「どうしてそんなに驚いている?」 「い、いえ・・・。 どうして娘さんが村長さんの前、ここにいるのかと・・・」 ベッキーはクリストファーを見ながらそう言った。 やはりベッキーは何かを知っているようだった。 「あら。 村長の娘は私よ?」 「え?」 アンナが自ら異を唱える。 だがベッキーは理解が追い付かない。 「どういうことですか!? クリストファーは村長さんの娘さんでは・・・」 「ベッキー姉さん、何を言ってるの? 今まで僕に一度もそんな話はしたことがなかったでしょ」 「それは村長さんの娘さんを守るためで!」 「僕は村長さんの娘さんじゃないよ。 性別も男だし」 「・・・一体どういうこと・・・」 場は混乱を極め、とりあえず話をまとめるためギャリーが間に入った。 「おそらくの話だけど・・・」 「?」 「ベッキーさんはクリストファーと本物の娘のアンナさんを間違えたんじゃない?」 「間違えたってどういうこと・・・?」 困惑しているベッキーに村長が尋ねる。 「その前にベッキーは本当に娘のアンナを攫った犯人だった。 それは合っているか?」 「・・・はい」 ベッキーは目を伏せ白状した。 それを聞いた村長は問いただす。 「どういう経緯か話しなさい」 「・・・この村はおかしいと思ったからです。 村長さん、私も生き残った人間なんですよ」 「・・・ッ!」 ベッキーをメイドにしていたのはただの偶然のようだった。 まさか人間が紛れ込んでいるとは思ってもみなかったのだ。 「村長さんが何を考えてこの村を作ったのかが分からなかった。 機械だらけにして娘さん、アンナさんにどのような教育をするのかが怖かった。 だからアンナさんを逃がしたんです」 「それはどうやって・・・」 「この村の人はこの村から出てはいけないという決まりがある。 それは村人が機械だと周りにバレてはいけないから。  だから生まれたばかりのアンナさんを籠の中に入れ近くにいたカラスを誘き寄せ連れ去ってもらったんです」 「そんな・・・」 「翌日、すぐにアンナさんのことが気になりこっそりと村を出ました。 だけど当然すぐに見つかるはずもなくこの村の警備員に捕まってしまった」 「アンナを攫った犯人だと思い我々は尋問したが進展はなかった。 だから5年程ベッキーを監禁しておったな」 「はい・・・」 ベッキーはギャリーを見た。 「さっき貴方が言ったように間違えたということは・・・。 その空白の5年間があだとなったのでしょう」 「どういう意味だ?」 「私は釈放された日にすぐ隣町へ行きました。 そこにアンナさんが届けられていることを願い市役所へ行って尋ねました。 5年前にカラスが運んできた子供はいなかったか、と。  そして『います』と返事をもらったんです」 皆真剣に聞いていた。 「そこで顔写真も見せてもらいました。 その顔写真を頼りにアンナさんを探し回った。 そこで出会ったのがクリストファーだったんです」 「・・・本当に見間違えだったんだ」 年齢も性別も異なっていたが、それはクリストファーがただ誤魔化しているのだと思っていた。 「これが偽りのない私の犯行です」 この場は静まり返った。 そこでアンナが村長に尋ねた。 「・・・では最後に。 どうしてお父様はこの機械だらけの村を作ったのですか?」
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