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澄生は私の肩にかかっている髪を手の甲で背中に流がしながら、優しく触れる。制服越しとはいえ澄生の手の感触が伝わってきて、鼓動が爆速で駆け巡っていく。
こんなに大きな音を立ててたら、澄生まで聞こえちゃうんじゃないだろうか。
どうしよう、隠さなきゃって思うのに。うまくできない。
焦りながらも澄生の様子を見れば、あまり感情を表に出さない澄生が眉間のしわを深くさせて、私の肩口をごしごしと擦っていた。
「……埃」
「ん?」
「細かい埃、なんか……、たくさんついてる」
そ、そんなに嫌そうな顔するほどついてるの……?
まって、汚いって思ってる?!うわぁ!恥ずかしい!
慌てて、自分の肩に視線を落として手を伸ばせば
「亜緒は触らないで。俺がやるから」
澄生に柔く制されて、伸ばした指が所在なく宙に浮いた。相変わらず不機嫌そうな顔で澄生は私の方を見ずに、肩を優しく払い続けている。
空中にさまよっている指の行き先を少し変えれば、澄生の髪に触れられる。
そう気づいたら、指先が急にどくどくと痛い。
澄生のさらりとした黒髪。その毛先が橙色の光に透けて少しだけ茶色に輝いている。
間近にある澄生の顔。大好きな石鹸の匂い。肩に触れる手の感触。
―――…… 手を伸ばしても、幼なじみじゃない私でも、そばにいてくれるだろうか。
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