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頭上に感じた重みに、思考が一瞬飛んだ。
思わず呼吸を止めて、澄生の手の動きに全神経を集中させてしまう。
再び同じようにぽんぽんっと優しいリズムが落ちてきて、そのまま髪を撫でつけるように滑っていく。何度も何度も往復して…まるで大切なものを磨き上げるように…ゆっくりと、そっと触れてくる。
澄生が私の頭を撫でるのなんて、今までだって何度もあったのに。
な、なんかいつもと違うような……。そう思うのは、あのチャラ男に触られた後だからかな。
じんわりと澄生の熱が流れ込んでくるみたいで、ふわりと気持ちが上向くのに……、苦しい。
「……澄生?」
声が震えないよう、騒がしい胸の音を気づかれないよう、ゆっくり瞬きをした。
一瞬だけ重なった視線は、澄生が逸らすからすぐに解かれてしまう。
「……ほんと、な」
「……」
「同じクラスがよかった、よな」
「……っ」
そう言いながら、髪の上を流れ続ける澄生の手のひらに、心臓がぎゅっと鳴る。
澄生も私と一緒がいいって思ってくれてたなんて。いつもぶっきらぼうでつれなくて。私が近くにいられるよう気を付けていないと、すぐに離れていってしまいそうなのに。
なんでだろう。
澄生の涼やかな目元がほんのりと赤く見える。
それって、窓から差し込む夕陽のせい?
……それとも、もしかしたら。
見当違いだとわかっているのに、期待を込めて澄生を見てしまう。
すると、澄生は微かに眉根にしわを寄せて、私の頭を撫でていた手を止めた。
「そうしたら、あんなやつに……」
「……え?」
ぽつりとこぼれた言葉がよく聞き取れなくて、首を傾げた。
澄生は下向かせた視線のまま、小さく息を吐き出して、手を私の肩に置いた。
そして、私の両肩の何かを払うような仕草で触れてきた。
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