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沈黙を破ったのは褐色の男だった。
「黙ってても仕方ねえ。この中にAI? ロボット? が居るんだろ。そいつを当てねえと」
修介もそれに続ける。
「そうですね。まずは自己紹介をしませんか。名前は知っておいた方がいいと思うんです」
「そうだね」
美月が髪を軽く揺らして頷く。
「僕は福井修介です。高校二年生です」
「私は、櫻野美月っていいます。修介と同じ高校の二年生です」
二人の先導に、褐色の男と茶髪の女が続ける。
「大和田剛だ。土方をやってる」
「杉之原綾よ。まあ、成人はしてるわ」
丸刈りの少年が流れに乗る。
「森喜代太。中学一年」
そこで止まってしまう。最年少の女の子は俯いたまま、ひくひくと息を啜っている。
「泣いてたって解決しねえだろ」
剛が舌打ちをする。綾も顔に皺を作って溜息をつく。反論したのは美月だった。
「そんな言い方しないでください。この子はまだ小さい子なんですよ」
画面を見た美月は、穏やかな微笑みを向けて、柔かい声で諭す。
「お名前を教えてくれないかな。大丈夫。私が守るから」
この空間の中でも、美月は輝きを保っている。修介のよく知る、惹かれているところである。
女の子はゆっくり顔を上げる。目元が真っ赤に腫れている。瞳と鼻を腕で拭ってから、ぽつりと言葉を置いた。
「桂菜々実。七歳」
こうして名前の開示が終わる。相手を僅かに把握したことで、参加者の思考能力が回復してくる。
「ここにくる直前の記憶を出し合いませんか」
修介は、画面に映る全員の、焦燥の熱が引いたことを確認してから提案した。言葉を返したのは剛である。
「そんなの思い出してどうすんだよ」
「僕たちは無理やりゲームに参加させられています。しかし、AIは、主催に用意された存在です」
「……連れてこられる記憶はないってこと?」
修介の意図を真っ先に汲んだのは菜々実であった。彼女を除く一同は面を喰らう。喜代太が左手を皿に、握った右手で木槌を打つ。
「そうか。AIだけは、連れ去られたんじゃなくて、後から用意されたわけだから、当然、誘拐される記憶なんてないもんな」
修介の提案の狙いが全員に浸透したところで、修介は自ら先陣を切る。
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