ここに、AIが居る

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「僕と美月は、美月の部屋に居ました」 「そうだね。私の誕生日だったから」  二人の会話に入ってきたのは綾である。 「誕生日に二人って……あなたたち、付き合ってるの?」 「まあ、はい」  修介の肯定に、画面の向こうの美月が、頬を染めて俯く。その姿に修介もくすぐったくなる。 「俺は、仕事の移動途中だったと思うぜ」  続けて答えたのは剛である。その目は不自然に泳いでいる。 「私も仕事帰りだったわね」  綾も伏目になっている。喜代太が続く。 「お母さんのお見舞いに行ったところは憶えてる」  一同は画面の向こうの菜々実を見る。残る回答者は菜々実だけなのだから、当然の流れである。  菜々実は何も言わなかった。代わりに顔をくしゃくしゃにして、頬に大雨を降らせた。 「ああ、もう! いい加減にしてよ!」  叫んだのは綾だ。その形相は憎悪で歪んでいる。 「私、子どもが大嫌いなのよ! そうやって泣けば済むと思ってさあ。そうやって記憶がないのを誤魔化してんじゃないの? あんたがAIなんでしょ!」  美月がキッと綾を睨む。 「なんてことを言うんですか。菜々実ちゃんはまだ七歳ですよ。怖くなって当然です!」 「そうやっていい子ぶってさ、あんたみたいなタイプも大嫌い。この状況でよくいい子でいられるわね。人の心が無いAIなんじゃないの?」  修介は画面に映らぬように拳を握った。その手は震えている。努めて平坦な声で間に入る。 「杉之原さんは、何のお仕事をされていたんですか」  綾はばつの悪そうな顔になる。 「な、なんだっていいでしょ」 「後ろめたい仕事なのか?」  次の乱入者は剛だった。へらへらとした表情で続ける。 「まさかキャバクラか? その厚化粧は夜の仕事じゃねえかって、一目見た時に直感がそう悟ったんだよな」 「何よ、だったら何だっていうのよ!」 「おお、的中か! 夜の仕事するほど金に困ってんだよな。大方、男に貢いで借金漬けってとこか? それならここから出たいよな、五千万が欲しいよな」 「うるさいわね、何が言いたいのよ!」 「俺たちを騙して、このゲームに勝とうとしてるんじゃねえかってことだよ」 「私がAIだっていうの? ふざけないで!」  般若の面をつけていた綾だったが、急に言葉が止まる。しばらくの静寂が流れる。菜々実は泣いている。美月の表情は険しい。修介と喜代太は、大人のやりとりを沈黙で見守る。
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