ここに、AIが居る

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ここに、AIが居る

「今からゲームを始めます」  福井(ふくい)修介(しゅうすけ)は、黒の中で目覚めた。空間に溶け込む黒の椅子に座らされている。カプセル状の部屋のようだが、扉の場所は暗くて判然としない。暗黒の球体の中に居るようだ。  首に違和感を感じて手を添える。鉄製の首輪がはめられている。無機質な冷たさに、修介はぞくりとする。  修介は顔を左右に振って、冷静になるよう努める。改めて声のした方を見る。正面に長方形のモニターがあった。漆黒の空間の中で、モニターの輝きは異質である。  映っているのは、紫のフードを被った人物である。影に隠れて顔は分からない。 「皆様の中には、AIが居ます」  画面が切り替わった。上に三つ、下に三つになるように、均等に六分割される。それぞれの四角の中に人の顔が映っている。右上に映る女の子を見た時、修介から血の気が引いた。 「美月(みづき)……!」  栗毛色の髪を後ろで結った女の子は、修介と同じ高校生である。水色のワンピースにも見覚えがある。 「修介!」  相手にも自分の姿が見える、そして、声が聞こえるようである。美月は目を見開いている。 「今から三時間後にAIだと思う人物に投票していただきます。最も得票の多かった方を、首輪を使って殺害します。最多得票者が複数人存在した場合は、その全員が殺害されます」 「殺害って、ふざけんなよ!」  左上に映る男は、三十歳前後と思われる、褐色の屈強な人物である。眉間に皺を寄せた男に激昂に、右下の女の子が震える。大きな瞳に白い肌の女の子は、まだ小学生に見える。 「勝者には、賞金五千万円が与えられます」  その言葉に全員がピクリと反応する。中でも大きく目を開いたのは、上段真ん中に映る二十代の茶髪の女性と、下段真ん中の中学生と思しき丸刈りの少年である。 「ただし、もしAIを見抜けなかった場合、人間が全員――」  意味ありげに言葉が区切られる。その次に発せられた単語は、修介達を戦慄させた。 「死にます」  参加者から生気を奪った張本人は、最後の言葉を残して役目を終える。 「それでは、三時間後に投票のアナウンスを行います。ご健闘を」  空間は鈍重な静寂に支配された。
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