直接、会いたい

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 僕の言葉に、店長は目を丸くする。 「うちが潰れるって!? 誰が言っていたの!?」 「お客様です!」  僕は店長に詰め寄る。 「夜逃げなんかしないですよね!? ある日、突然シャッターが開かなくて……」 「待って待って! そんなの無いから!」  店長は顔の前で手をぶんぶん振る。  でも、その表情にはどこか焦りが見えた。  僕は店長をじっと見る。すると、店長は小さくふう、と息を吐いた。 「……潰れはしないよ。ただ……名前が変わっちゃうかもしれないけど」 「え? 名前が変わる?」  僕は意味が分からずに首を傾げた。  店長は頭を掻く。 「つまり……別の大きなところに助けてもらうことになるかもしれないから……そうなったら、うちのレモンっていう名前は消えちゃうかもな……って」 「ええっ!?」 「あ、まだ分からないんだよ!? 子会社化の提案を受けたのは事実だけど……僕だってこのレモンを守りたいから、もうちょっと踏ん張ってみる。けど……最近は特に売り上げがね……」 「……」  僕は店内の様子を思い出す。  食品、衣料品、日用品……どのフロアのお客さんも年齢層は高い。若い人はみんな、有名な名前の大きな店に行っちゃうんだな……。  僕は店長に訊ねる。 「……カフェはどうなっちゃいますか?」 「もちろん、守ってみせるよ! ただ……もしもの時は仕入れ先なんかは変わっちゃうかも。その時は、余裕を持って早く伝えるから! お給料もちゃんと支払うから! もうちょっと僕を信じて待っていて下さい!」 「店長……」  不安に思いながら、僕は頷いた。  子会社化されるということなら、潰れるということは回避出来るんだと思う。  けど……。  このレモンは、松尾さんの思い出の場所なんだよね……。  きっと、カフェの味が変わってしまったら松尾さんは寂しいと感じると思う。  そんなのは……嫌だ。  松尾さんの心が休まる場所を、守りたい。 「あ、そろそろ時間か……海ちゃん、カフェを任せるね。ごめんね、心配をかけて」 「いえ……」  僕はエプロンを身につける。  心は重く落ち着かない。ちゃんと仕事をやり通せるか不安だった。
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