いつものセットメニュー

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 ちらり。  帽子の隙間から淡いブラウンの瞳が見えた。髪の毛はてっぺんはどうなっているのか分からないけど、首より長いそれは金色だ。なんだか、モデルさんみたい。足、長いし、肌も、白いし。もしかしたら、本当にそういった仕事をしている人なのかも。なんてね。こんな小さなデパートのカフェに、そんな人が来るわけないや。 「ごゆっくり、どうぞ!」  あんまりじろじろ観察するのは失礼だ。僕はトレイをテーブルに置いて、すっとカウンターに戻った。お客さんは、今のところ彼ひとり。混むまでちょっと暇だなぁ……。テーブルでも拭いて回ろうかな。  僕はふきんを手に、カウンターから出て、手前のテーブルから順番に磨きはじめた。お客さんが食べ終えて置いていったお皿やグラスも回収していく。今日みたいに暑い日は、皆アイスコーヒーを注文するからグラスが多く出る。落として割ってしまわないように、僕は少しずつそれをシンクに運んだ。 「……」  僕は気になって、彼の方を見た。  彼はたらこのパスタをゆっくりと食べている。淹れたてのコーヒーはひとくちも飲まずに。不思議だ。せっかくホットにしたのなら、熱いうちに飲んだ方が良いと思うのに。お冷はちょっと減っているから飲んだんだろう。うちのアイスコーヒーは口に合わないから、ホットコーヒーにしているのかな? そんなに不味くないと思うんだけどな、アイスコーヒー……仕入れているやつだし。  そうやって彼をまた観察していたら、ぱちっと視線がぶつかった。 「あ……」  まずい。  お客さんを観察していたなんて知れたら……!  変に目を逸らすとますますヤバいので、僕は顔を引き攣らせながら不自然な笑顔で彼に言った。 「今日は、暑いですね!」
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