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「図書館に、ちょっと」
「……図書館?」
「はい、ヴェリテ公国のことについて、少々調べたくて」
眉を下げながらそう言うと、彼は「またなんで?」ときょとんとした表情で問いかけてくる。
全部を話すことは出来ない。そう思い、セイディは「ちょっと、気になることがあるのです」と答える。
「……そっか」
フレディは深追いをしてこなかった。
心の中でそれに感謝をしていれば、彼は「でも、それよりも多分いい場所があるよ」と言って人差し指を立てた。……いい場所。
「ヴェリテ公国のことだったら、王宮にある図書室にある本の方がいろいろと載っていると思うよ」
何でもない風に彼はそう言うが、それはどうなのだろうか。
そもそも、セイディは王宮の図書室に入る権利を持っていない。あそこは機密書類も保管してあるというし、ただのメイドが入れる場所ではない。
「ですが、私は入れな――」
「僕が殿下に交渉してきてあげる」
「えぇっ!」
いや、それはさすがに迷惑では……そう思ってセイディが目をぱちぱちと瞬かせていれば、フレディは「じゃ、ここらへんで待ってて」とだけ言い残し何処かに歩いて行こうとする。
しかし。
「あの、ミリウス様は本日も行方不明でして……!」
さすがに行方不明の人物を捜していたら日が暮れる。
そう思ってセイディがそう叫べば、フレディは「だーいじょうぶ!」という。……何が大丈夫なのだ。
「僕、殿下の居場所大体わかるから」
「……えぇ」
「殿下の魔力特殊だからねぇ。ちょっとたどれば、あっという間だ」
彼はそんな言葉を残して颯爽と歩き去っていった。
それを聞いたセイディの思うことはただ一つ。
(本当に、魔法の悪用……)
それだけだ。
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