昔話(1)

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「えぇっと、オフラハティ子爵家は、私から見てお爺様が発展させた家です。お爺様はとても優秀なお方で、誰からも慕われるような人でした」  目を閉じてゆっくりと話す。  今でこそ顔がおぼろげになったものの、実母を亡くしたセイディを必死に育ててくれたのは祖父母だった。そのため、彼らには感謝してもし足りないと思う。 「お父様はお爺様の命令で私の実のお母様と結婚したそうです。まぁ、よくある政略結婚の一種……だと思えば、いいと思います」 「……そう」  セイディの実父であるアルヴィド・オフラハティは何処となく気が弱かった。しかし、プライドだけは高くいわばジャレッドのようなタイプだったのだ。そして、彼は何よりも実の父に逆らえなかった。 「でも、お父様にはすでに恋人がいました。その方が私の継母、異母妹レイラの実の母です」  セイディの継母であるマデリーネ。彼女はアルヴィドを心の底から愛していたらしい。そのため、彼が結婚してからもアルヴィドの愛人として側に居続けたそうだ。それは、古株の使用人から聞いていた。 「貴族なので愛人を持つことを咎められはしませんから」  そこまで言って、セイディは一度肩をすくめた。
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