昔話(1)

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 アシェルはてきぱきと指示を出し、報告に来た騎士を連れて歩き出す。その後ろ姿をセイディが呆然と眺めていれば、リオが「……大丈夫?」と声をかけてくる。どうやら、今の自分は相当ひどい顔をしているらしい。 「……はい」  ちょっと、頭が混乱しただけだ。そういう意味を込めてにっこりと笑えば、リオは「……無理しなくても、いいのに」と言葉をくれた。そのため、セイディはゆるゆると首を横に振る。 「ただ驚いた、だけです。ちょっと、いきなりすぎて……」  苦笑を浮かべながらリオにそう声をかければ、彼は「そりゃそうよね」と同意してくれた。その後、彼も苦笑を浮かべる。 「いずれは、こうなると思っていましたし。代表聖女を務めてしまった以上、お父様方に居場所がバレることはわかっていました」  リオにソファーを勧められ、そこに腰を下ろす。そして、セイディはそんなことを零してしまった。  どうしてだろうか。リオにならば、本音を話していいと思える。それは、彼のことを信頼しているから。彼のことを、信頼のおける友人だと思っているから……なのだろう。まぁ、微々たるものかもしれないが。 「……気になっていたこと、尋ねてもいい?」  セイディのすぐ隣に腰を下ろし、リオはセイディの顔を覗き込んできてそう言ってくる。だからこそ、セイディはこくんと首を縦に振った。 「……貴女の元家族は、どういう人たちだったの?」  直球な問いかけだった。でも、不思議と不快感はない。そう思いながらセイディは「……聞いても、面白いお話じゃないですよ」と前置きをする。 「構わないわ。貴女のこと、知りたいの」  それに対して、リオはまっすぐにセイディの目を見てそう言ってくれる。  ここに来た当初。異母妹であるレイラのことは多少話した。けれど、父と継母のことを話すのは初めてかもしれない。そう思いながら、セイディは何から話そうかと口を動かす。リオは急かすことなく待ってくれていた。
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