騒動の始まり

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 『光の収穫祭』が終わって、しばし経ち。季節は秋が終わり冬を迎えた。もう少ししたら、雪も降りだすかもしれない。そんなことを考えながら、セイディは寄宿舎の掃除に明け暮れる。幸いにも寄宿舎の中は魔法で適温にされており、寒くはない。まぁ、少しひやっとしているのは訓練で身体が熱くなっている騎士たちに合わせてだろうか。そこら辺に関しては、セイディが口に出すことではないので黙っている。 「ふぅ、こんなものかなぁ」  一階の廊下を掃除し終え、セイディはそう呟く。時計を見れば時間は午後三時。そろそろ一度休憩した方がいいかもしれない。そんなことを考えながらセイディが掃除の後片付けをしていると、遠くから「セイディ!」と自身を呼ぶような声が聞こえた。その声は男性にしては少し高めであり、セイディもよく聞き覚えがある声だ。  そちら――窓の外に視線を向け、「フレディ様?」と返事をすればその声の主である唯一の宮廷魔法使いのフレディは、にっこりと笑ってセイディのことを見据えていた。彼は小脇にファイルのようなものを抱えており、何処かに行った帰りなのだろうか。もしくは、今から何処かに行くのだろうか。 「どうなさいました?」  窓越しにフレディに問いかければ、彼は窓に近づいてきて「ちょっと、頼まれてくれる?」と告げてくる。 「と言いますと?」 「実は僕、この後仕事があるんだ。けれど、届け物もしなくちゃだめでさ……。これ、王弟殿下にお願いできるかなぁって」  そう言ったフレディは、小脇に抱えていたファイルをセイディに差し出してくる。ファイルにはタイトルなのか『ヴェリテ公国への遠征について』と書いてあった。……誰かが、行くのだろうか。
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