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vs.信長
神社の境内に入った和尚さん。
拝殿に何やら人影が...
「そこにおるのは誰じゃ?」
「おおっ!和尚、久し振りじゃのう。儂じゃ、信長じゃ。この社は儂を祀っておる。世話になっており自ら舞いを奉納するのじゃ。それに此処には京の美味い地酒が本殿前にたんとある。なんと十と四樽じゃ。茶の前に一献嗜むのが儂の習わしよ。あこから年毎に異なる銘柄を一升所望。あれだけあれば少々減じても分かるまい。儂の計略では、あの樽山全て楽しむには百と四十年要す。その間、禍無くす世直しの企ても今一度練ってみるわい。だが和尚、他言無用じゃ!ガハハハッ」
一方的に語る信長。聞いてもないのに暑苦しい。
続けて「人間五十年・・・」
得意の『敦盛』が始まった。
朗々とした謡曲に和尚が思わず盛大に声を掛けた。
「イヨッ!熱盛ィィィ!」
だが、己にすっかり酔ってる信長は舞に無我夢中。
居た堪れなくなった和尚はその場を静かに立ち去った。
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