プロローグ

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「さあて、そろそろ揃う頃じゃのぉ」  古びた袈裟を纏った無精ひげの老和尚がのんびり呟いた。時は、令和四年盆明けの八月十九日、丑三つの刻に半時あまり。此処は京都、洛北に位置する船岡山。山というより小さな丘。その頂に近所の名刹にある塔頭から三々五々気ままに集まってくる連中がいた。    五山の送り火を境に夏の盛りが峠を越す頃、年に一夜有志で茶を楽しむ集いである。しかし、得体の知れぬ流行り病でこの二年は自粛を余儀なくされ、和尚も大変寂しい思いをしていた。
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