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プロローグ
今日お越しの皆様、お忙しい中をありがとうございます。そして、このバザーに寄せて頂いた多くの友情に感謝申し上げます。
誠に僭越ながら、まずは主催者である不肖、谷譲治がご挨拶を述べさせてもらうと致します。
……アメリカの歴史は常に開拓者が造ってきたものと言えるでしょう。そして、開拓者の歴史には、私ども移民の歴史も含まれると思っています。
私の親父は、関東平野の隅っこで米や野菜を作っていた農家の五男坊でした。当然、分けてもらえる土地や金は無かった。
そこで、思い切って移住し、同じ移民の娘である母と二人、必死に働き、アメリカに根を張ったわけです。
二人の間の長男である私は、子供の頃から家の手伝いに忙しかった。
そのせいか、まともに勉強なんてしたこともない、文字もろくすっぽ読めない大人になっていたのです。
英語は母国語だから喋れるのは当たり前ですが、読み書きは苦手。計算も苦手。
そんな私ですが、生まれつき丈夫なのか、虫歯も無いし、悪いところはどこを探したって見つからない健康体。そのことは親に感謝です。
我が家は、家族一丸となって真面目に働いて生きてきました。しかし、ずっと貧乏でした。
それでも、とりあえず飢えることもなければ、家族の誰かが病気や怪我することもなく、平和そのもの。
でも、私はいつも思っていたのです。
金持ちになりたい。
今よりいい暮らしがしたい。
家族に楽させてやりたい。
ついでに、可愛くて優しい女の子が嫁さんに来てくれたら、俺の暮らしは完璧なんだがなぁって。
そんな時です。
私の前に不思議な人が現れて、幸せになる魔法を授けてくれたのです。ある呪文を毎日唱えるだけで、富も名誉も手に入れられる、と。
『悪魔』と名乗ったその人は、いわば私の恩人ですね。…………
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