金のスマホ

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         -1-  登校途中にいつも私は湖の畔でスマホでラインをする。湖の際に立ち、素敵な景色を眺めながら、誰の目も気にすることなく、ラインに没頭できるこの時間が私は好き。ラインの相手は別の高校に通う川嶋実人(さねと)君だ。  今日も私は湖の畔でスマホでラインをしていた。近くで一羽の白鳥が静かに湖上に佇んでいる。優雅で素敵な景色。突然、白鳥が急に荒々しく羽をばたつかせて飛び立った。それに驚いて、私はスマホを手から滑らせ、湖に落としてしまった。 「きゃーっ!」  でも、私のスマホは防水だった。それに浅い湖なので、きっとスマホは手で簡単にすくいだすことができる。   「あれ?」  浅いはずの湖の底が見えない。手を入れても底に届かない。たまたま深い場所に落ちたのか?  私が絶望していると、岸から数メートル離れた湖面から泡と霧が吹き出し、そしてその霧の中から人影が現れた。 「きゃーっ!」  驚いた私は身動きが取れなくなった。霧が晴れると、仙人のようなおじさんが湖の上に立っているのが見えた。よく見ると両手に1台ずつスマホを持っている。私の携帯はおじさんの片方の手に握られていた。状況は上手く呑み込めなかったが、とにかく私のスマホは戻ってくるのだと私は安堵した。 「あなたが落としたのは金のスマホか、それとも銀のスマホか」  おじさんが私に訊いた。 「金のスマホです!」  私は言った。 「あなたは嘘をつきましたね。スマホは渡しません」 「ちょっと、おじさん! 嘘じゃないって! おじさんが持ってるそれ! まだ誰も持ってない、私の限定カラーの(ゴールド)のスマホだよ・・・!」  おじさんの周囲に霧がかかった。そして泡を立てながら、おじさんは霧と共に湖の中に消えていった。    
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