嗄れる夏

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 Tシャツに着替えてやってきたみーちゃんは、「汗くさくない?」と不安そうに訊いた。首を横に振ると、頬をすり寄せられた。みーちゃんはスキンシップが多い。  最初のころはそうされるたびに身体がかちかちになって、よく笑われた。その笑いがいい意味なのか悪い意味なのかわからなくて困っていると、みーちゃんは穏やかに言った。  ――あーちゃんは、そのままでいいよ。変わらずに、そのままで。  それは魔法だった。まるでこれまでの十三年間がくるりとひっくり返されるような、魔法の言葉だった。 「あーちゃんはほんとうに料理がうまくなったね」  ハンバーグをひとくち食べたみーちゃんは、うれしそうに言った。 「ほんとう? ハンバーグ、おいしい?」 「すごくおいしいよ」 「みーちゃんが買ってくれた本に載ってたんだよ」 「ああ、あの本ね。もしかして本に載ってた料理、ほとんどつくってくれた?」 「うん。もう一度食べたいのある?」 「そうだなあ。玉子のサンドイッチが食べたいかな」 「えー。どうせならもう少しむずかしいやつにしてよ」
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