嗄れる夏

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「じゃあ、オムライス」 「オムライス? オムライスはだめ」 「なんで?」 「玉子をうすく焼くの、むずかしいから」 「ひどいなあ。あーちゃんがむずかしいやつにしてって言ったのに」  みーちゃんはうれしそうに怒った。くすくす笑いながらいっしょに食べるご飯は、なによりおいしい。  みーちゃんはいつも料理をほめてくれるし、うっかりお味噌汁をこぼしたりしても、「だいじょうぶ? 身体や服にはかかってない?」と心配して、いっしょに床を拭いてくれる。しゃべり過ぎてうるさくない? と訊いたときには、「もっとしゃべって、もっとあーちゃんのこと聞かせて」と言ってくれた。どんなにちいさなことでも、どんなに疲れて帰ったときでも、みーちゃんは真っ直ぐ話を聞いてくれる。  でも、みーちゃんは自分のことをあまりしゃべってくれない。  訊いたら答えてくれるけど、あんまり楽しくなさそうに見える。顔は笑ってるのに、泣いてるみたいな、怒ってるみたいな、そういう目をする。もしかしたら、だからスキンシップするのかもしれない。それがみーちゃんにとっての「話し方」なのかもしれない。
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