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「父ちゃんの酔っぱらった時の口癖がさ」
「お父様の、口癖?」
ジュリエッタが顔を上げ、不思議な表情を浮かべる。
「『母ちゃんに会った瞬間、こんな美人が俺の嫁さんになるのかと、一生分の幸運使い果たした気分になった!』だったんだ」
「お母様、綺麗な方だったのね」
「俺は、父ちゃん似だから、ほとんど面影ないけど」
「お父様、酔うたびにそうおっしゃるなんて、お母様を本当に愛してらしたのね」
ジュリエッタが微笑む。俺も微笑み返して続ける。
「うん。で、絶対続けてこう言うんだ。『でも、そうじゃなかったと、お前が生まれた時にわかったよ』」
ジュリエッタをそっと抱きしめる。
「俺、それ聞くたびに、すごく嬉しくて、なんだか目頭が熱くなったけど……。今日の俺は、父ちゃんの方とまるっきり同じ気持ちだ」
抱きしめる腕に力を込める。
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