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ありがとう、ジュリエッタ。俺、今、嬉しくてたまんないよ。ほんとは、そう続けたかったんだけど、思いがあふれて、それ以上言葉にならなかった。でも、ジュリエッタは俺の気持ちを察してくれたみたいで、背中に手を回して、なでさすってくれる。
「リカルド、絶対いいお父さんになるよ」
ジュリエッタがそっとつぶやく。
人生は旅だ、なんてよく耳にするけれど。言葉の意味は、言った人の数だけあるんだろう。俺は、生涯探求し続けることを旅になぞらえているんだと思ってた。
でも、ジュリエッタと出会ってから、旅は非日常で帰る場所があるから楽しめる、道連れが誰かによって全く違うものになる、そんな意味もあるのだと確信するようになった。家に温かく美しい明かりを灯してくれる人がいるから安心できて、その人が行く手を照らす明かりそのものでもあるんだ。
春に灯されるのは一体どんな明かりなんだろうと、まだ見ぬ我が子に思いを馳せ、目を閉じた。
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