研究者

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研究者

「AIの新事実!一般人でAIに対抗できる手段がある!?」 そんなタイトルの番組がテレビに映っている。 プツッ――― テレビの電源を切る音。 そのテレビを消したのは、ある1人の研究者だった。 研究者はため息をついた。 「シンギュラリティが起こる前にAIを壊滅させないといけないんだよな……」 わかってる、わかってるよそんなこと――― AI―――正式名称はAvian Influenza―――和訳すると鳥インフルエンザ――― 研究者は鳥インフルエンザを壊滅させるためのチームの一員だった。 だが、研究は思うように進まず、AIはどんどん感染力を広めていき、名前に反してヒトにも感染するようになっていった。 次第にワクチンも効かなくなり、人間の力では止めることの出来ない領域へと 入ってしまった。 その頃から、「AIの知能が上がっている」なんて噂が流れ始めたのだ。 その噂が流れている間にも、日に日に感染力は明らかに強まっていった。 やはり知能が上がっている――― そう思ったある研究者が一つのチームを立ち上げた。 その研究者が、今ため息をついている研究者だ。 実は、先程言ったことは、表上の話だ。 本当は、この研究者は自分の仮説を確かめるためにチームを立ち上げたのでは ない。 所謂「上」からの命令だった。 やはりどの分野にも、逆らえない権力を持った者、というのはいる。 この研究者は不運にも、その権力者に目をつけられてしまった、というわけ だ。 研究者は今日も苦悩している。 どんどん知能が上がるAIに。 わがままな上司に。 全く進まない研究に。 やる気のない同僚に。 研究者は今日も苦悩している。 そんな研究者が世界の英雄となるのは、まだもう少し先の話。
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