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ようこそ、ウラ京都へ
京都までのお遣いを頼まれたら、喜んで引き受ける。まして交通・宿泊費も負担してくれると言われれば、なおさらだ。
「でも私も多少のお金はあるから、ちょっとだけでいいんだからね」
全額自己負担すると言えないのが痛いところだが、無職の身の上だ。無職になったあげく、社宅を引き払って戻って来た実家からも早急に出て行かざるをえない。
――私が出て行けば、全部丸く済むからいいんだけどね。
そうは思っても納得できない。だからと我を通して実家に残っても、居心地の悪い気分になるのは自分だと言うことも知っている。
とにかく次の仕事と部屋が決まるまで、息を殺して実家にいざるを得ない。
鬱々とした毎日から、少しだけ息抜きのように泊りがけで出かけられるのは嬉しい。家族は京都まで行く暇があるなら、就活活動をしろと口うるさく責めるだろう。けれど今は、そんな家族から離れられることに心底ほっとしている。
「ダメよ。おばあちゃんが、麻緒ちゃんにお仕事を頼むんだもの」
「そうよ、仕事として請負なら実費プラスアルファよ」
祖母が言えば、承子が続ける。
承子は麻緒の叔母だ。人材派遣会社を経営するかたわら、シングルマザーとして小学生の息子を育てている。今日、麻緒が訪れている二子玉川のマンションで祖母と三世代同居をし、愛車のレクサスで颯爽と仕事に出かけていくパンツスーツがよく似合う女性だ。
承子が交通費、先方への手土産と必要な項目を上げていく。タブレットを操りながら、スマホで必要経費を計算するスピードが速い。その手慣れた様子を見れば、日々の仕事の賜物であろうことは一目瞭然だ。
「あとお漬物やスイーツとか買ってきてほしいものもあるから、その分のお金と私からのお小遣いを足して……こんなもんね。ホテルは二泊三日で取って支払い済みだから、もし何かあって連泊になったらカード払いで、あとで請求しなさい。現地でのガソリン代もよ」
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