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「そう。京都は最寄りの警察署で受けてくれるけど、東京は限られてるから承子さんの会社経由で請け負うのが一番ラクなんだよね」
そういえば承子の知り合いに、警察の人間がいたはずだ。その人も遣刀使絡みで知り合ったのだろうか。
「各都道府県で違うんですね」
「いや、最寄りの警察署で受け付けてくれるのは京都くらい? 京都はあやかしが出ても百鬼夜行が起こっても、おかしくない感じがしない?」
「まあ、なんとなく……」
「でしょ。だけど東京はあやかしとかなんとかって言って、信じてもらえなさそうだよね。むしろ何言ってんだ、こいつって目で見られそう」
「確かに」
「刀持って歩いてたら、すぐ職質かけられるしさ。参るよね」
経験者らしい言い方だ。職質の件は、すでに承子に知られて怒られた後な気がする。
「ここまでで何か質問ある? 僕のプライベートでも、答えられる範囲内で答えるよ」
御子柴の親切さをありがたく思いつつ、その軽さに苦笑して質問する。
「遣刀使の方が戦っている相手って、普通の人ですよね」
先ほど軽トラックで運ばれて行った人は、どこからどう見ても普通の人間だった。しいていえば、クスリをやっている人だろうかと思われるくらいだ。
「そうだね。普通の人。普通の人が、ちょっとしたきっかけで道を外してしまう。今日みたいに峰打ちで済めばいいほう」
「……悪い方は?」
質問した側なのに、口の中が乾く。答えるほう――遣刀使として戦っている御子柴の方が、よほど答えにくいだろうに。
「斬る」
沈黙が落ちる。予想していた言葉なのに、改めて言われると言葉が出てこない。
「殺さないよう、最大限努力はするよ。だけど無関係な人間が被害に遭うのは避けなきゃいけない。たまたま通りかかって巻き込まれてしまった人と、その人を害そうとする人間、どちららの命を守るかといわれたら、僕は前者を選ぶよ」
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