才能がひとつだけあるとしたら

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ご当地アイドル。 展示会でワンピースを着て立つイベントコンパニオン。 企業の役員秘書。 企業の総合受付。 広報。 人事補助。 総務。 日本語教師。 ナレーター。 そして、ライター。 ここに学生時代の書店バイトも含めれば11の職業を経験したことになる。 大学を卒業してから15年、私はひとつの企業でひとつの職種をずっとやり遂げると思っていたのに、人生は思い通りにいかなかった。 今、専業でフリーライターをしている私はパソコンを打つ。 目がかゆい。 この間、眼科で極度のドライアイだと言われて、市販のものより効くという目薬が処方された。 10年前の私なら「職業病かも」と悩んでいたかもしれない。 それなのに、ここ数年は自分の抱える職業病をいとしく感じる機会が増えた。 秘書をしていたときに身につけたビジネスライクな態度、ナレーターで培ったよどみなく話すスキル、大勢を前にしても堂々と話せるようになった日本語教師の経験。 今までやってきたすべての職業が、私の書く文章に宿っている。 編集者やクライアント、取材先との接し方に生きている。
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