実を結ばない花 ―金木犀と神隠し5―

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「そこの庭でも見たことあるよ。こう抱えて」 「やめて。怖い」 「大丈夫だよ。僕はきみを食べたりしないから」 「……だから、逆じゃね?」 「ああ、そうか」  ――――って考えると、やっぱ俺たちの関係って人の営みとして異常なのかな、なんて思ったりする。 「さて、じゃあ、恨みはないけどこの子は玄関にでも置いておこうか。外には出せないし、浴室はこれから使うし」 と、奏人さんは花瓶を取り上げる。 「別にいいけど」 「僕が嫌だよ」  すたすたと玄関に持って行って、俺が靴脱いだ横に置く。 「きみの匂いが分からなくなる」 「……へ?」 「だから」  こっちを向くと俺の首に手回して引き寄せて、首筋にひたりと唇を押しつける。 「っ……?」 「ほら、こういうきみ自身の匂いが、せっかくなのに分からなくなってしまうだろう?」  ……やっぱ、この人怖い。  シャワー済ませて、ベッドで素肌重ねると、ふとさっきの話を思い出した。 「なあ、風呂行っても、俺の匂いする?」 「するよ」  仰向けになった俺の頬から耳へとキスを落としながら、奏人さんは言った。 「ボディソープとかの匂いじゃなくて?」 「最初はそれがきついけど、だんだんきみ自身の匂いになって気にならなくなる」 「……そんなもんかね」  耳の下から首筋へ唇を触れて、舌を這わせる。  ぞくぞくと快感が走って、裸の背中を抱きしめた。 「汗臭いとかじゃない?」 「大丈夫」  笑って奏人さんは言う。
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