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「そこの庭でも見たことあるよ。こう抱えて」
「やめて。怖い」
「大丈夫だよ。僕はきみを食べたりしないから」
「……だから、逆じゃね?」
「ああ、そうか」
――――って考えると、やっぱ俺たちの関係って人の営みとして異常なのかな、なんて思ったりする。
「さて、じゃあ、恨みはないけどこの子は玄関にでも置いておこうか。外には出せないし、浴室はこれから使うし」
と、奏人さんは花瓶を取り上げる。
「別にいいけど」
「僕が嫌だよ」
すたすたと玄関に持って行って、俺が靴脱いだ横に置く。
「きみの匂いが分からなくなる」
「……へ?」
「だから」
こっちを向くと俺の首に手回して引き寄せて、首筋にひたりと唇を押しつける。
「っ……?」
「ほら、こういうきみ自身の匂いが、せっかくなのに分からなくなってしまうだろう?」
……やっぱ、この人怖い。
シャワー済ませて、ベッドで素肌重ねると、ふとさっきの話を思い出した。
「なあ、風呂行っても、俺の匂いする?」
「するよ」
仰向けになった俺の頬から耳へとキスを落としながら、奏人さんは言った。
「ボディソープとかの匂いじゃなくて?」
「最初はそれがきついけど、だんだんきみ自身の匂いになって気にならなくなる」
「……そんなもんかね」
耳の下から首筋へ唇を触れて、舌を這わせる。
ぞくぞくと快感が走って、裸の背中を抱きしめた。
「汗臭いとかじゃない?」
「大丈夫」
笑って奏人さんは言う。
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