実を結ばない花 ―金木犀と神隠し5―

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「あの百合みたいに、惹きつける匂い。こんな雨の日は特に」  それほど強い降りじゃないけど、外の雨音は聴こえる。  首筋から胸へ、なぞるように唇が下りて、まだ柔い先に触れると体がふるえる。  唇で食んで、舌先で転がすように撫でたと思うと今度は押しつぶすみたいに捏ねられて。  声堪えて枕を掴むと露わになった腋の下に舌を当てられた。 「ちょっ……」 「恥ずかしい?」  そうされるのは初めてじゃないけど、毛剃って処理してるわけじゃないし……胸とか普通に出てるところにされるより変な感じする。 「……分かってんなら」 「じゃあ、こういうのは恥ずかしくない?」  って指先で胸の硬くなったのを擦られると、息が漏れた。 「……恥ずかしいよ」 「だったら同じだろう?」 「いや、それおかしくね?」  片手で胸の先オモチャにされて、腋の下なんてただでさえくすぐったいところに舌当てられたら。  なんか、もう全身投げ出して、この人に汚されたくなる。  あの、もう受粉なんて出来ないのに、蜜を垂らして香りを放って虫を誘う花みたいに。 「なぁ、……下、触って」 「自分で触る?」 「は?」 「右手は自由にしてあげるから」  悪趣味。  けど、余裕もないので仕方なく自分で慰めると、下着の上から触れただけでもひとりでするのと違う快感が走る。  腋や二の腕の内側、普段表に出ない部分にキス落とされながら胸弄られたら、これだけですぐいける気がする。
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