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熱っぽい吐息が唇にかかって。
顔歪めて微笑むの見ると、胸しめつけられそうになる。
自分から唇触れ合わせて言った。
「なぁ、顔見てしたい」
「……きみが上?それとも下?」
「……フツーに下のつもりだったけど、今、上って言ってくれたから上がいい」
軽く唇ついばんでも嫌がらなくて、笑って奏人さんは言った。
「いいよ。おいで」
――――で、上になっても、結局顔見られながら好きにされるだけなんだけど。
立場逆転出来るのは、何年先になるんだか分かったもんじゃない。ていうか、永遠に変わらないかもしれない。
夜半、目が覚めるとまだ雨は降っていて、体は重だるくいつもの感覚だった。
今何時頃だろ。
明日は俺はシフト休みだけど、この人は昼過ぎには一度学校に行くって言ってたから。
出来れば、4時より3時、3時より2時半、今が早い時間でその分長く一緒に居られるといいのに、と思う。
すん、と鼻を鳴らすと、あの香りはしたけど少し違ってる気がした。
あのきついけど澄んだ香りじゃなく、時間が経って褪せて澱んだような……。
振り返ると恋人は長い睫毛を伏せて眠っていて。
寝返り打って顔を寄せると、この人が言うように少しだけ甘い肌の匂いがした。
見つめていると、不意に目が開いてどきりとする。
ぱちぱちと瞬きをすると、ふわりと俺に微笑みかける。
「おはよう」
「……おはよ、って、まだ暗いけど」
「知ってる」
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