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「だから、気付かせてくれて感謝しているんですよ。彩さんが気付かせてくれなかったら、私は辰己が既婚者で不誠実な人間だったことに気付くのが遅くなっていたと思います。きっかけをくださって、ありがとうございます」
一歩、一歩と距離を詰め、揺れているロッカーの扉に手をかけおさえる。
「その後の彩さん主導の嫌がらせは理不尽なこともありましたが、あれも成長するきっかけになったので最終的には彩さんに感謝ですね」
距離が縮まったことで、もう少し声を落としても聞こえるだろう。
「結局あれって、私に”彩さんは略奪の出来婚だ”って暴露されるのが怖かったんですか?だからわざわざ私の口を塞ごうとして、孤立させようとしたり、私の信用を落とそうとしたんですか?こういうのは後から何言っても相手にされないですもんね。勉強になりました」
彩さんは聞いているのか聞いていないのか、無表情だ。
「でも私は誰かに言うつもりなんてなかったんですよ。彩さんには色々とお世話になったことも、事実ですから」
絶対に視線なんて逸らさなかった。
「自分の行ったことに耐えられず更に自分を苦しめる行動を重ねちゃうのって、惨めですね」
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