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それから私たちは熱唱した。色んな歌を。途中、飲み物がなくなりそうだったので、何度か注文した。
終了時間が近づいた頃、私はピコピコさんに最後にもう一曲歌おうと提案した。
「これ、好きなんですよー」
私が笑って言うと、ピコピコさんは頷いて、マイクを握る。
無愛想だと思っていたピコピコさんも、今は楽しそうに見えた。私たちは楽しく歌っていた。
そこに部屋のドアが開けられる。
「お客様ー、ご注文の品ですー。おわっと!」
中に入ってきた店員さんがつまずいてよろける。
「うわ、危ない……!」
トレイに乗っていた飲み物が宙を浮く。私目掛けて飛んでくる。
私は思わず目を閉じた。
バシャッ。
何かがかかった音がした。でも、私にはかかっていない。
「……?」
おそるおそる目を開けると、私の前にピコピコさんがコップを両手に持って構えていた。
びしょ濡れになって。
「ピ、ピコピコさん!?」
「わ、わー、す、すみません! すぐ拭くものお持ちします!!」
店員さんが部屋を出て一目散に駆けていった。
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