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「……」
「ピコピコさん!? 大丈夫ですか!?」
私はピコピコさんの正面に立つ。
「だ、だい、だい、じょう、ぶで、す……、ペン、ギンさんは、だい、じょう、ぶです、か?」
何だか声の調子がおかしい。
「私は大丈夫です! それより何か拭くもの……!」
私は鞄の中からハンカチを取り出す。小さい。でもとりあえず仕方がない。
私はピコピコさんを拭いてあげる。
「あ、あ、ぬれ、てしまった、はか、せに、おこられ、る……」
「博士?」
何のことだろう。
「あ、ど、しま、しょ、まだ、ぼう、すい、かこ、できて、ない、の……に……」
「ピコピコさん? 防水加工って何のことですか?」
ピコピコさんの声がだんだん聞こえづらくなってくる。
しばらくして、店員さんがタオルを持って駆けつけてきた。
「お客様、拭くものお持ちしました!」
でも、店員さんが着いた頃には、ピコピコさんは動かなくなっていた。
その時、ピコピコさんのスマホがピロンと鳴った。気になって画面を覗くとメッセージが見えた。
『ピコよ。オフ会は順調か? くれぐれもAIだと気づかれんようにな』
ピコピコさんは、壊れてしまったんだと気がついた。
スマホに一滴、水が落ちた。
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